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No.151 Black velture

今回は、"Black vulture (クロコンドル:Coragyps atratus)"です。

Black vulture (クロコンドル:Coragyps atratus)

Frushi Groupのバナナ園“Beata”の入り口の枯れ木に群れていたBlack Vultureのうち、木のてっぺんにいた二羽。

前回はサバンナノスリを取り上げたので、続いて何か気の利いた鷲鷹類をと思っていたのですが、どうしても引っ掛かる鳥がいて次に進めませんでした。現地ではネガティブな意味で差別的な響きを持つGallinazo(ガジナーソ)という名で呼ばれているこの鳥、La Costa(海岸地帯)では何処へ行っても必ず目にするBlack Vultureを今まで取り上げていなかったからです。Turkey Vulture(ヒメコンドル)のところでも書きましたが、エクァドールの人達はアンデスの高峰に棲む本物のコンドル以外は、例え姿形がコンドルに似ていても決してコンドルとは呼ばず、Gallinazoと呼びます。King Vulture(トキイロコンドル)、Turkey Vulture(ヒメコンドル)とこのBlack Vultureの3種がそれです。1963年に大学を卒業して、初めてエクァドールに中期出張滞在していた折、日本からのバナナ業界の先輩数人と農園廻りに同道しました。スペイン語が出来るということで通訳をさせられていた私がこのGallinazoをハゲワシと訳したところ、中南米によく出張していた先輩の一人に、「南米にいる日系の人達は、この鳥をハゲタカと訳していて、ハゲワシとは言わないらしいよ。」と、教わりました。それから暫くして、アンデス文明が栄えた所ではCondor(コンドル)と呼ぶのは、あの真正の鳥だけだということを知り、アンデス先住民の人々がCondorと口にする時にはある種の畏敬の念、と懐かしさ、といった様な特別な響きがあることに気が付きました。多分、ペルーやボリヴィアに移住した日系の人達は、現地の人々のそのような感情を大事にして、コンドルはハゲワシ、ガジナーソはハゲタカと呼んでいるのかなあ、と思うようになりました。


Black vulture (クロコンドル:Coragyps atratus)

Frushi Groupの“Agrosavanna”農園で、高い枝から餌探しをしていたサバンナノスリの頭上に突然飛んで来ていちゃいちゃし出したガジナーソの番と、それが気になってしょうがないサバンナノスリ。

ただ、この余り人々に好かれていないガジナーソも考えてみれば気の毒で、顔貌が不気味だというのと、自然界の掃除屋(scavenger)の役割を担っていますので、広大な牧場や草原の片隅で死んだ動物の屍骸に群れ集まる習性、市街地のごみ捨て場に何十、時には百羽を優に超えるトビよりも大きく、真っ黒なガジナーソがビニールのごみ袋に首を突っ込んでごみを食い散らかしている様子は、その迫力たるや日本のカラス達の比ではありません。また、原野や人家もほんとに疎らな農業地帯の中を真っ直ぐに作られた幹線道路脇の木々や電柱には、車に撥ねられて死ぬ動物や鳥、ときには仲間のものでもあったりするのですが、それらを待っている彼等の姿が目撃できます。

またこの鳥は姿に似ず、上昇気流をつかまえて数百メートルの高さまで舞い上がり、滑空していますので、双発の小型機で産地廻りをしている時、プロペラがガジナーソを引っ掛けるのではないかとハッとさせられることもしばしばです。このガジナーソ・ネグロはガジナーソ・ロッホ (和名ヒメコンドル)と違って一羽で飛んでいることは殆どありませんし、そのテリトリー内に見慣れない人間が入って来たからといって、直ぐに様子見に飛んで来ることもありません。