雲が架かったアンデス山麓をバックに辺りを睥睨していたSavanna Hawk。画面左下の所にもう一羽の鷹らしき大きな鳥が映っていますが、シャッターを切るときは気が付きませんでした。
掲載第150回を前にして、どの野鳥の、どの写真にしようかとかなり迷いました。この150回が私にとってはとても大きな区切りになるので、私なりに納得のゆくものを選びたかったのです。ハチドリの写真には、私なりにこれならというものが未だ幾つもありますが、このコラムの表題が表題ですし、また掲載ローテイション上にも無理があるので、バナナ園とその周辺で撮れた、「撮った」ではなく「撮れた」野鳥写真にすることにしました。あれこれ考えた末、やはり私の好きな鷲鷹類にしよう、と決めたのですが、前にも書きましたように、巨大な古木が次々と消えて行ってしまった現在、もうバナナ園に鷲、熊鷹のような、冠羽を持った猛禽が来ることはほとんどなく、恐らくアンデス西山麓に隣接するほんの僅かなサニート農園かオリート農園で目撃できたら、まさに僥倖と言うしかないような状態ですので、私も過去5年間、La Costa(海岸地帯)で冠羽のある鷲鷹類を見たのはたった一度しかありません。前回触れました自然保護区のCerro Blanco周辺でさえBlack Hawk-Eagle(クロクマタカ)を目撃するのは「raro(まれ)」とされています。そんな訳で、私が持っている鷲鷹類の写真の中で、好きなSavanna Hawkのものを選びました。
この鷹は第40回の所でも取り上げましたが、グァヤキールの東を流れるグァヤス川の岸辺からアンデス西山麓に至る、グァヤス盆地東南部13,500平方キロ程のサバンナにはおそらくかなりの数が棲息していると思われます。と言うのは、去る3月に出張したとき、産地視察に向かうため午前8時頃、対岸の町Duran(ドゥラン)を通り過ぎてハイウェイの料金徴収所に差し掛かる辺りから、道の両サイドで次々とSavanna Hawkの姿を眼にしたので、翌日同じ所を通過するとき、道路の左側(北側)で目にするこの鳥を数えながら行きました。私を乗せてくれた会社の車は時速120キロ程で走っていましたので、正確には勘定することが出来なかったのですが、この鷹は大型なのと、見晴らしの良い余り高くない潅木の梢や、牧場の杭の上に止まって餌探しをしていますので、割合簡単に見つけることが出来ました。なんと、約1キロ強の間隔で一羽ずつ確認しました。ただ、20キロも走ると、棲息密度がはっきりと低くなったのは、餌となる野鼠や野兎、その他の小動物の棲息環境が変わっているためだと思います。また、この地域には、Snail Kite(タニシトビ)が多く棲息しており、その他にも、2種のCaracara、小型の鷹類などが季節柄(北半球の冬ですので渡って来ていて)目撃できました。
あまりに近くまで寄れたので、この後の写真は、目に焦点を合わせることに夢中になっていたため、足切れになっていました。
今回掲載する写真は、異常に長引いた乾季もようやく終わろうとして、雨季の始まりの兆候が出だした本年の 1月に撮ったものです。場所は鷹類の棲息密度が高い料金徴収所から東へ20キロ程行った所で、敷地が20万ヘクタールを超えるエクァドール最大の砂糖黍畑と精製工場を持つサン・カルロス農場を横切ってFrushi Groupのバナナ農園La Candelariaの視察に行く途中でした。サン・カルロス農場の舗装道路を南から北へ走っていると、雨が本格的に始まっていないため、未だ砂糖黍の植え付けが行われていない広大な畑の脇の電柱に、大きな鳥が二羽止まっているのが見えました。目を凝らして見ると、二羽のTurkey Vulture(ヒメコンドル)だったので、見慣れた鳥だし、3回ほどシャッターを切って、先を急ぎました。3キロ程走ると再び大きな鳥が、今度は一羽杭の上で羽を休めているのが目に入りました。「またGallinazo Rojo(Turkey Vulture)か。」と嵩をくくってレンズも向けず、車のスピードも落とさないで走っていたのですが、近づくつれ、どうも鷹のようなので、慌ててスピード・ダウンしてもらい、車を降りて、シャッターを切りながら静かに一歩一歩大きな鳥の方へ歩いて行きました。この鳥がSavanna Hawkであることは直ぐに確認出来ましたが、我ながら、「なんと現金なもんだよなあ。」と少々気恥ずかしく、呆れ返ってしまいました。でも、有り難いことにこの鷹は杭の上にじっとしていてくれたので、信じられないような距離、15メートル以内の所から写真が撮れました。これほど近くまで鷲鷹類が、私が近づくのを許してくれていた経験は後にも先にもありません。