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No.149 Southern Yellow-Grosbeak

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Southern Yellow-Grosbeak (和名不明:Pheucticus chrysogaster) "です。

Southern Yellow-Grosbeak (和名不明:Pheucticus chrysogaster)

自然保護区Cerro Blancoを守るために設けられた長く頑丈な柵の中央にある、物々しい鉄製のゲートを入って直ぐの叢で餌をとっていたSouthern Yellow-Grosbeak。

今回の野鳥も和名が分かりませんでした。Yellow Grosbeak としては、オウゴンイカルというのが見つかったのですが、Southern Yellow-Grosbeakという英名では見当たりませんでした。この鳥と似たような野鳥の写真は何人かの方のホーム・ペイジで見掛けたので、多分近似種に関する説明を読めば何か分かるのではないかと思って、思い当たるサイトにお邪魔した後、2巻からなる“The Birds of Ecuador”の“Status, Distribution and Taxonomy”を開いてSouthern Yellow-Grosbeakの項を見ました。そこで説明されていたのは、Mexican Yellow-Grosbeakともコスタ・リカのBlack-thighed Grosbeakとも異なっている種で、以前はGolden-bellied Grosbeakと呼ばれていたそうですが、その後エクァドールでこの鳥が独立種とされた、とあります。どうりで和名が見つからないのだなあ、と自分なりに納得している訳です。

皆様もうご存知のように、Japanese Grosbeakはイカルのことで、Pine Grosbeakはギンザンマシコと呼ばれています。このヴェネズエラ、コロンビア、エクァドールそしてペルーにまたがって棲息する鳥は、いずれミナミオウゴンイカルとか、ナンベイオウゴンイカルとか命名されるのかなと想像しています。これらアンデス山脈北部4カ国に棲息する野鳥は何種類もいるようですが、野鳥の命名をされる方々が、19世紀にスペインから独立し、数十年の短い国家生命しかなかったけれども、世界史の中に特異な光彩を放った、この4カ国が形成していた共和国“Gran Colombia”のことを頭の隅にでも置いていただいて、和名を付けるときの何らかの参考にして貰えればなあ、と、夢みたいな他愛無いことを考えています。

Southern Yellow-Grosbeak (和名不明:Pheucticus chrysogaster)

雨季の始め、花が咲き出した潅木の間を動き回っていたSouthern Yellow-Grosbeakの雄。

この鳥を最初に見たのは、La Costa(海岸地帯)の乾燥した場所でしたので、海抜1750メートルの雲霧林Tandayapa Valleyで見られる野鳥リストの中にこの鳥の名前を見つけた時はちょっと驚きました。ただ、実際に、Tandayapa Bird Lodgeの裏山に入って鳥見をしていたとき、ガイドさんのDannyに強いスペイン語訛りでSouthern Yellow-Grosbeak. だよ、と説明を受けたのですが、その鳥の姿をはっきりと確認する事が出来なかったためか、「なんかちょっと違うんじゃないかなあ。」という程度の感想を抱いただけで、他の色鮮やかな野鳥達に神経を取られて、そのまま、聞き流してしまいました。その後、前記のガイド・ブックでこの鳥は海抜0メートルから3500メートルの高地にまで棲息していることを知り、凄い鳥だなあ、と感心している次第です。

この写真を撮ったのは、長い乾季が終わり、雨季が始まる直前、草木が新緑に覆われる時期で、場所は第125回のEcuadorian Trogonを撮った、グァヤキール市の西15キロ程の所にあるCerro Blanco自然保護区入り口のブッシュの中でした。 また別の時にはCerro Blancoから僅か3キロ程しか離れていない人造湖Chongonの湖畔で、Southern Yellow-Grosbeakの雌の写真も10葉程撮りましたが、多くの野鳥の常で雌は地味ですので、ただこの場合は、雄と比べればということで、雌だけを独立して見ればそれはそれでかなり派手目なのですが、今回は雄の写真だけを掲載します。このCerro Blancoには3つの野鳥観察用のコースが作られていますが、難易度が高い2つのコースは途中岩肌が露出した傾斜の急な部分もありますので、乾季に訪れるのは、山歩きに慣れた方でしたら何の問題もありませんが、雨季の雨で滑り易くなるとかなり面倒になりますから、普通には一番易しいコースを歩かれるのがお勧めです。グァヤキールの空港からでも車で片道30分もあれば行かれますので、ガラパゴス観光の帰途に飛行機搭乗の時間調整をするような場合は、このCerro BlancoかChongon湖を訪問されるのがお勧めです。また、ここCerro Blancoでは野生に返すリハビリのため、金網の中とはいえ今では幻の野鳥となってしまったGreat Green Macaw、 別名 Buffon’s Macaw (ヒワコンゴウインコ:Ara ambigua)を見ることが出来ますので、市内の他の公園で時間潰しをするより、この二つのスポットのどちらか、あるいは両方へ行かれることを、バーダーの方々には推奨します。岩山へ入って行かなくても、ゲートをくぐってから山道に取り掛かるまでの平坦部もとても広く、林の中に散策路も設けられているので、簡単に様々な野鳥がみられます。勿論、時間に余裕があって、足回りの準備万端な方は、アンデス西山麓の雲霧林に対して“Bosque Seco(乾燥地帯森林)”と呼ばれる原生林の姿が残された、岩山の自然探索コースへ分け入った方が、Cerro Blancoで記録された215種に上る、La Costa(海岸地帯)とBosque Secoに棲息するより多くの野鳥を目にすることが出来るのは言うまでもありません。