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No.143 Black-headed Munia(?)

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Black-headed Munia(?) [ギンパラモドキ(?):学名:不明]"です。

Black-headed Munia(?) [ギンパラモドキ(?):学名:不明]

一羽か二羽だったら、迷鳥の可能性もあるのでしょうが。小さな群れで行動していたので、何れにせよ留鳥か渡りの途中だと思います。渡り鳥にしてはちょっと肥満気味ですね。

今回の題は、実はどう書いて良いか分からず、殆どやけっぱちで決めた様な次第です。申し訳ありません。そうなってしまった理由は、この野鳥の同定が出来なかったこと、この鳥に似た写真はおろか、イラストも私の持っている中南米の野鳥図鑑には見当らなかったことです。題がないことにはこの欄が始まらないので、必死になって、何回も野鳥図鑑の陸鳥が載っているページを一ページずつ見返しました。何処かでこの鳥を見ている筈なのだが、見つからないなあ、と焦りました。この写真の野鳥はもっと前に取り上げるつもりでしたが、4週間も順延して来ました。似た様な野鳥が載っていて、同定を間違えたのであれば、まだ言い訳は出来るでしょうが、専門書に載っていないと書くことは、いかに年齢を経て図々しくなった私でも非常に躊躇することでした。

ちなみに私が所有している中南米のガイド・ブックは次のようなものです。The Birds of Ecuador, A Field Guide to The Birds of Peru, A Guide to The Birds of Mexico and Northern Central America, A Guide to The Birds of Costa Rica, A Guide to The Birds of Panama, A Guide to The Birds of Colombia, A Guide to The Birds of Venezuela, The Birds of South America

これらのガイド・ブックには頭部が黒、あるいは、濃いこげ茶色で胴または腹部が茶色の鳥は幾つも載っていますが、嘴が写真のように大きく頑丈なものは見当たりませんでした。途方に暮れてしまって、頭を休めるため、横になって月刊誌「バーダー」を開いて、デジスコの記事を読んでいると、「ギンパラ」の写真が目に飛び込んで来ました。「これだよ、これ。」と、大きな独りごとを言って、再び机に戻って、かつて東南アジアへ出張した時に街の本屋さんや空港のbook cornerで買って来たガイド・ブックを次々に開き、Munia類を探しました。すると、Indonesia, Singapore, Thailand, India, Nepalの野鳥の中に見つけることが出来ました。Indian Black-headed Munia (ギンパラ)、Southern Black-headed Munia(キンパラ)、Chestnut Munia(シマコキン)などなど。つまり、Muniaは東南、南アジアではそんなに珍しくはない野鳥のようです。どうりで、私もこの野鳥を何処かで見ている筈だというおぼろげな記憶があったわけです。

そこで、悪戯心がむくむくと起きて来ました。旧大陸の野鳥に似た新大陸の鳥には、「・・・・モドキ」と命名するのが一種の流行だったようなので、私もこの鳥にギンパラモドキと仮に命名するかと。それにしても、この鳥の同定が出来ないのがとても気懸かりです。

Black-headed Munia(?) [ギンパラモドキ(?):学名:不明]

庭に下りて虫を取っていたギンパラ似の野鳥。この類の野鳥は新大陸には居ないということになっているのか、単に記録が無かっただけなのか、アメリカを中心とした新大陸の野鳥研究家グループの中で何らかの理由でデータが欠落しているのか気になるところです。

この野鳥を撮ったのは、本年1月11日の午後16時頃、Rio Quevedoの東岸に在るFrushi Groupのバナナ農園“Envidia 5”に、若い同僚の農業学士Ing. Miguel Angel Perezの運転で、品質管理責任者で農業・昆虫学を専攻したIng. Carlos Uquillasと軽四輪駆動車に悪路を揺られながら向かっていた時でした。農園廻りには40数年慣れ親しんで来た私ですが、さすがにこのでこぼこ道には辟易して、周りの自然が未だ残っている田舎の風景を見ながら気を紛らわせていました。とある農家の庭先で6、7羽のずんぐりした体型の、ツグミ程の大きさで、頭が黒く、胴が茶色の鳥達が夢中で虫を食べているのを見つけました。早速、行過ぎた車を止めて貰い、15メートル程歩いて戻り、シャッターを数回切ることが出来たのですが、家の中から大きな声がして、二人の大柄な若者が気色ばんで出て来たので鳥達は飛んで行ってしまいました。年かさの、兄らしい若者が「なんで他人の家の写真を撮るんだ。貧しい我々の家を外人のエクゾティック趣味から写真に撮るのか。」と、激しい口調で私に食って掛かってきました。これは、農村にはよくいる物事を偏った見方で捉えがちな若い活動家だなと、判断した私は、「Solo tomaba fotos de los pajaros que se encontraban alli en su jardin.(貴方の庭にいた鳥達を撮っていただけだよ。)」と、穏やかに、ただ少々身構えながら答えました。彼ははじめ私の言葉を信用しないので、彼の目の前にカメラの背面のモニター・スクリーンを向け、そこに映っていた鳥の姿と彼の庭の一部を確認して貰いました。「Ya comprendi.(分かった。)」とだけ言うと、未だ何か釈然としない弟を連れて家に戻って行きました。二人の仲間ははらはらして成り行きを見守っていたようで、一人が「ダッシュ・ボードを開けて、万が一に備えていましたよ。」言いました。「Pistola ?」と聞くと頷いていました。「グラシアス、ミゲル。私も学生時代は社会正義感から学生運動に参加した時があったから、正義感から社会に怒りを向けている若者の目と、ゆすりたかりが目的で他人を脅すために凄んで見せている人間の目の区別は、未だつくよ。」と答えました。そんなこんながあって撮った写真です。