尾羽の先端の模様が第93回掲載のIsidro君のものとは明らかに異なっています。1月撮影。
前回のScarlet Macaw(コンゴウインコ)に続いて、アマゾンで密猟者の手で捕えられてLa Costa(海岸地帯)まで連れて来られ、サニート・バナナ農園に放されているインコを取上げます。なんでサニート農園かというと、化学物質の使用を極端に制限していない一般栽培(慣行栽培)農園では、サニートや有機栽培に近いような農園管理をしている所でない限り、野鳥はバナナ園内には棲みつきません。このキンソデボウシインコの存在に気が付いたのは、去年、産地視察の参加者が撮ったバナナ園で見た野鳥のビデオをチェックしていた時でした。そのビデオの中で、前から気になっていた緑色の中型インコ“Orange-winged Amazon”が映っていたので、どうしてこのアマゾン原産のインコがSr. Hoyos(オージョスさん)のサニート農園にいるのか、とても知りたくなり、その参加者に幾つかの質問をしたのですが、何も判りませんでした。それは当然のことで、農園の関係者に聞くしかないだろうと考え、Sr. Hoyosに会った時に色々聞こうと決めていました。キンソデボウシインコに私が特別な関心を持つようになったのは、去年La Mana地区の有機栽培オリート農園“La Hda Luisita(ルイシータ)”を久し振りに訪れ、そこの家族の皆さんに可愛がれているキンソデボウシインコそっくりなインコ“Isidro(イシドロ)”君に再会し、このシリーズ第93回でIsidro君の写真と記事を掲載してからです。
そこでも書きましたが、Isidro君の尾羽の先端に掛けての色模様と、The Birds of Ecuadorをはじめ私が所持している数冊のガイド・ブックに描かれているキンソデボウシインコの模様が違っているので、いつか実物を見たら、私の疑問もはっきりするのではないかと考えていたからです。英語名の”Orange-winged Amazon”から推察すると、Isidro君の尾羽の色模様こそがキンソデボウシインコ本来のもので、ガイド・ブックのイラストの方が、特異な個体の模様を描いたのか、或いは、アマゾンと一口に言っても、実質的には、ヴェネズエラ、コロンビア、エクァドール、ペルー、ボリヴィア、パラグァイ、アルゼンチンそしてブラジルの8カ国にまたがる広大な地域を内包している地の名称ですので、棲息地による地域差があるのか、はたまたメスの尾羽の色模様を描いたのではないか等と考えていました。オレンジ色の羽は雄の尾羽に表れる婚姻色なのかどうか、その辺になると分かりません。ただ、4月に訪れた時は、一羽の翼の内側にオレンジ色の羽が見られましたが、尾羽の先端の外側は萌黄色で、Isidro君の尾羽先端部の色模様とはかなり違っていました。ガイド・ブックによると、オレンジ色の羽は、普段は目に付かず、このインコが飛ぶ時に目に入るのだそうです。このガイド・ブック“The Birds of Ecuador”の著者は、ソデボウシインコは他の大型のインコ達と異なって、河岸の粘土層が露出した場所に来てミネラルを摂取する目的で土を食べる事はあまりしないと書いていますが、TVの自然ドキュメンタリー番組を見ていると、このインコも他のインコ達と一緒になって土を食べていました。TVカメラマンは、ソデボウシインコが粘土を食べにあまり来ないのを知っていて、珍しいシーンだから、撮影したのでしょうか。
尾羽の内側にオレンジ色の羽が僅かに見えますが、Isidro君のものとは違うと思います。4月撮影。
オージョスさんのサニート農園にいるソデボウシインコは幼鳥の時に番で買われたのですが、その後成長し、農園場長の説明によると最近、次世代が孵ったそうです。アマゾンの鳥がLa Costa(海岸地帯)で増えたとしたら、それはそれで専門家達には頭の痛い問題でしょう。ただ、ソデボウシインコが気候風土、植相が異なる海岸地帯で増殖して行けるかどうかは、分かりません。出来ることなら、Cerro BlancoにあるGreat Green Macaw(ヒワコンゴウインコ)を野性に戻すためのリハビリ施設のような物が海岸地帯にも幾つかあると良いのでしょうが。ただ、そこにはたった一羽のヒワコンゴウインコしか収容されていません。もう絶対数が極端に減っているからです。また、エクァドールにこのような施設が少ないのは、逆説的にいうと野鳥の密猟被害が未だ大きくはないからでしょうか。話は飛びますが、オージョスさんの農園に放し飼いにされている前回掲載のScarlet Macaw(コンゴウインコ)は何時行っても、このソデボウシインコの番と一緒に行動しています。