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No.138 Scarlet Macaw( コンゴウインコ:Ara macao)

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Scarlet Macaw( コンゴウインコ:Ara macao)"です。

Scarlet Macaw( コンゴウインコ:Ara macao)

アンデス西山麓に続く広いSr. Hoyosの農園に放し飼いにされているScarlet Macaw。

前回掲載Capuchin Monkey(カツラザル)のところで、人間に飼われている野生動物のことに触れましたが、エクァドールの田舎へ行って時々目にする野生動物のペットは、スペイン語でTigrilloと呼ばれるオセロット(第95回掲載)、リスザル、カツラザルなどのサル類、インコ・オウム類、姿の可愛いフウキンチョウ類、鳴き声の美しいCacique(キゴシツリスドリ)等の野鳥が多いのですが、中には獏(バク)やメガネグマを飼っていた者までいます。十数年前までは、規制も煩くなかったのですが、最近ではそのような野生動物の飼育は法律で禁止されているためか、さすがに、バクやメガネグマを飼っている 人はもういないと思います。しかし、昔から人々に人気のあるインコやオウムの密猟は、テレビの自然ドキュメンタリー番組などでも取上げられるように、今でも中南米各国の野鳥保護官達を悩ませています。数年前まではエクァドールの地方都市ではインコ・オウムをよく売りに来る者がいたようです。この写真のコンゴウインコも、そしてQuevedo(ケヴェド)市内の南にあるバナナ農園“Envidia”に入る手前にある集落でよく目にするもう一羽も、同じように10年ほど前に アマゾンで捕らえられた幼鳥を売りに来たのを買った飼い主が、農園に放し飼いにしているのだそうです。 どうしてコンゴウインコをアマゾンに帰さないのか、と聞いたら、「帰して来いと言っても、売りに来た人間がそうですかと帰しに行く訳はないし、間違いなく他の飼い手を探すでしょう。アマゾンに帰しに行くといっても、アマゾンは広くどこで取って来たかは、貧しい売り子達には分かっていないので、どの辺りで、どの群れにこの幼鳥を帰したらよいのかは、ここに来てしまったらもう誰にも分からないのです。」と、言われました。 

Scarlet Macaw( コンゴウインコ:Ara macao)

このScarlet Macaw.は同農園に生えている木々の実を食べて居ついています。

このホーム・ペイジを見て頂いている方々はご存知のことと思いますが、このコンゴウインコをはじめとする大型のオウムや インコは、ほとんどの種が巨木に出来た窪みや穴に巣を作ります。しかし人間が商業価値の高い銘木と呼ばれる木、この場合は熱帯の古木ですが、を選んで伐採してしまうため、雛を生み育てる巣を作る場所がなくなっているのも、密猟と同じように重大で深刻な問題になっています。硬い木質を持った木目の美しい古木を使って作られた柱や家具を珍重するのは、洋の東西を問わず人間の歴史では古くから行われてきたことです。また、古木や巨木を切り倒すのは、家具製造や農牧業のためだけではなく、最近では、宅地造成上邪魔だ、保存には余分な経費が掛かるとして、エクァドールなどの熱帯圏の発展途上国以外でも、つまり、北半球の先進諸国と呼ばれる国々もその例外ではなく、勿論、我が国日本国内でも行われています。現に、私が住んでいる鎌倉の材木座でも、次々と会社・銀行などの別荘や寮が売られ、更地にされた土地には売り易い価格の住宅を建てる目的で、所謂宅地造成が行われており、その工事現場では小川の岸から尾根に向かって生えている4、5本の欅の古木を含めて10数本の成長した木々が伐採されようとしています。文化都市と自称し、世界文化遺産に登録して貰おうとした古都鎌倉で、経済力で世界第二位と言う経済的には恵まれている筈の日本の中の緑地保存条例が存在する鎌倉でさえ、古木を守ることが困難なのですから、日本よりもはるかに貧しい発展途上国で野生動物や野鳥の棲息地を守る為に、古木を切るのを止めよう、森を破壊するのを考え直そう、山を崩すのは駄目だと言っても、残念ながら殆ど出来ることではありません。

そんな理由から、世界中でRed Data Bookに載る、絶滅の危機が心配される野生動物や野鳥の数は増え続けています。アマゾン地域での大規模原生林伐採が行われていないエクァドールでも、LE(Locally Extinguished 地域的絶滅)、CR(Critical絶滅危惧IA), EN(Endangered絶滅危惧IB), VU(Vulnerable絶滅危惧II)などの略記号が付けられた野鳥や野生動物の種が増えています。そして、ほとんど全ての大型インコ、オオギワシに代表される鷲類などではまず、Red Data Bookに記載されていない種はないのではないかと思われるほどです。例えば、かつて中米のニカラグァからエクァドールのLa Costa(海岸地帯)、南はペルー北部にまで広く棲息していたGreat Green Macaw、 別名 Buffon’s Macaw (ヒワコンゴウインコ:Ara ambigua)は、現在エクァドールではほとんど見ることが出来ず、その生存が大きく危惧されるCRの指定になっています。Cerro BlancoからChongon-Coloncheを含む広大な海岸山塊でも、「20羽はいるだろう。」「いや、10羽から多くて15羽だよ。」などと言う議論が専門家達の間で真面目にされているほどです。この地帯では、バナナ栽培や稲作などの大規模近代農業は行われていないので、主要原因は古木の伐採と宅地造成だといわれています。因みに、今回掲載のScarlet MacawはエクァドールのRed Data Bookでは“Vulnerable”とされています。