ナマケモノというと、木の枝から仰向けにぶら下がった写真が多いので、樹のまたの安定した場所で、人間や猿たちのように赤ちゃんを抱っこして授乳しているのを見て、何故かほっとしました。
今回から3回は野鳥以外の動物を続けるつもりで、第1回と2回目は、Sora(第131回掲載カオグロクイナ)のところで紹介した、Sr. Freddy Hoyos(フレディ・オージョス氏)のValencia地区にあるサニート農園“Laurita”で撮った動物達です。
ナマケモノには2本指のものと3本指のものがいるようですが、これはミツユビナマケモノだと思います。レンズの角度もこれが精一杯で、指の本数を確認する事は出来ませんでした。もっと、動き回る動物でしたら、数カットの内には、指の本数が確認できるような写真も撮れるのでしょうが、なにせこの哺乳類は、英語名でも、スペイン語名(Perezoso:怠け者の意)でも、日本語名でも、まさに「名は体を現す」と言う表現がピッタリ来る動物ですので、限られた時間内では同じような構図の絵しか撮れず、指の本数は分かりませんでした。ただ、大体エクァドールのバナナ園で見かけるナマケモノはミツユビナマケモノが多いと聞いたことがあるので、オージョスさんの農園で撮ったこの親子と幼いナマケモノは三つ指だと思います。化学物質の使用を出来る限り抑えたサニート農園では、そこにちょっとした林や、あるいは小さな森があれば、まずナマケモノは棲み付いています。例えば、Sr. Miguel Larrea(ミゲル・ラレアさん)のサニート農園の“San Miguel”や、女性市長さんSra. Andradeの農園“San Marcos”等でも目撃されていますが、ただ、この動物は普段ほとんどじっとして動かないのと、体毛が樹皮や枯葉に紛れて保護色になる様な枝の生い茂った所にいるうえ、体毛に苔などが寄生してより周りの幹や葉っぱに紛れるため、とても見つけ難いのです。La Costa(海岸地帯)の原生林や二次林は大規模農牧業の発展に伴い、その面積が減少してしまったため、ナマケモノの絶対数も減っているのではないかと思いますが、一方では木に登る猫科の肉食獣や、Harpy Eagle(オオギワシ)などのナマケモノを捕食する大型の鷲も極端に減った事実があり、今では、人間を除けば、Boa Constrictor(ボアニシキヘビ)くらいしか天敵がいなくなっているので、森や林に入れば比較的出会うことの出来る野生哺乳類になったようです。
去る3月に首都圏コープの人達と出張した折、未だ幼いナマケモノが、突然現れた人間たちに驚いて樹幹を目指して大急ぎで登って行きました。3秒間で1メートルは上がっていた筈で、動物図鑑などで説明されているような異常に遅い動きではありませんでした。
最初の写真は、長引いた乾季も終わろうとしていた1月に、オージョスさんのサニート農園を輸出会社の産地責任者たち数人と訪問した時に、農園内に架かる竹とロープで作られた吊橋の上から撮ったものです。農園を歩いていると、場長が、「セニョール・イート、うちに棲み着いているペレソーソが赤ちゃんを産んだんです。見に行きますか。」と聞いて来たので、勿論、私は即座に「Si(ハイ)」と答えて歩き出しましたが、どうも同行者たちの足取りが重いのに気が付きました。「Que pasa?(どうしたの。)」と聞くと、上背は190センチ近く、体重は120キロを超える若い検査主任が、「私は谷の下から行きますよ。」と、答えて脇道へ降りて行ってしまいました。そこまで入り込んだのは初めてだった私は、目の前にその吊橋が現れて、やっとどうして皆の足取りが軽くないのか納得が行きました。さあ、「セニョール・イートがどうするか。」と面白半分に見ている仲間の手前、「Bueno(まあ。). No es un puente grande, no? (大きい橋じゃあないよね。)」などと、訳の解らないことを言って、望遠レンズを付けた一脚を担いで渡り始めました。60メートルもある吊橋の中ほどまで来ると、私の4メートル程先を歩いていた場長がすたすたと、橋の揺れも気にせず戻って来て、私に、「Mire. Madre e hijo. (見て。母親と子供ですよ)」と指差して教えてくれましたが、30メートルも離れていない喬木の樹幹にいるナマケモノの親子が判らないのです。じれったがった場長が幅1メートルもない吊橋で、私の脇にくっ付いて、指差すのですが、吊橋は揺れる、ナマケモノは見つからないはで、やっと、その親子を見つけた時の嬉しかったこと。