Tandayapa Bird Lodgeのヴェランダにやって来たムラサキフタオハチドリ。長い尾羽の色は私のイメージしたものにとても近いのですが、翼の羽の色に輝きが足りません。
アンデス西山麓Mindo-Nambillo(ミンド・ナンビージョ)地区のハチドリ3連載の2番目は、前回が鮮やかな赤紫の喉羽を持ったフジノドチビハチドリだったので、今回は緑色の体の羽毛と微妙に、そして美しく変化するメタリック・ブルーの長い尾羽を持ったムラサキフタオハチドリにしようと、この3連載をすることを考えていたときから決めていました。
キート周辺で難しくなく、つまり特別なツアーに参加しなくても、一般的なbird watchingで見ることの出来る尾の長いハチドリは、第27回に載せたBlack-tailed Trainbearer(ミドリフタオハチドリ)と、このViolet-tailed Sylph(ムラサキフタオハチドリ)です。ただ、ミドリフタオハチドリがいつでも簡単に見られた赤道記念碑公園では何があったのか分かりませんが、去年の7月に午前中行ったときも、また今年の2月の夕刻に出掛けたときも、一時間程も公園にいたのですが、それぞれ一回づつしかその姿を見る事が出来ませんでした。それも、木陰から怯えたように凄いスピードで飛び去って行きました。3年位前までは、午前中や夕刻には梢に止まってかなり大胆に、その姿を人間の目に晒していたので、シャッターを切る時間はあったのですが。ただし、晴天の日の多い赤道記念碑の辺りでは、アンデス高原特有の真っ青な空をバックに背を陽に向けて、辺りを見回していることが多いので、目にアイキャッチを入れて顔をはっきり撮ることは、空に引かれて露出が極端にアンダーになるため、私には大仕事でした。それでも、写真が撮れたから良かったのですが、人間に怯えてシャッターを切る時間さえくれないのでは、どうしようもありません。今度またあそこへ行っても、写真が撮れないようだったら、もう、Cotacachi(コタカチ)のフレンチ・レストラン“Mirage”の庭園へ行くしかないでしょう。
同じ場所で、違う時に撮ったものです。 頭の上に可愛いメタリック・ブルーの冠羽が写りました。しかし、被写体に陽が当たっていなかったので、露出がアンダーになったのが気になりますが、全体の色合いは気に入っています。
それに比べると、今回取上げたムラサキフタオハチドリを街中で見るのは、私の知る限り、とても難しいのですが、車で1時間半から2時間かけて、ひとたび雲霧林の中に入れば、Tandayapa(タンダヤパ)であれ、Bella Vista(ベラビスタ)であれ、Mindo(ミンド)であれ、もうバーダーには良く知られた幾つかのロッジ、ホスタル、あるいはキートからEsmeraldas(エスメラルダス)に至る街道筋に点在するレストランなどの庭先で、そこここに吊るされたフィーダーにやって来るこのハチドリを見ることは容易ですし、写真に撮る事も比較的簡単です。ただし、前回にも書きましたように、このハチドリも当然見る角度、特にハチドリと人間の目の位置が作る角度によっては、メタリック・グリーンに輝く額から頭頂に掛けての可愛い飾り羽や、喉の下にある一塊の青い羽、または青紫に光を反射する尾羽の色を最高の状態で見ることは出来ません。そして、さらに面倒なのは、例えばこのハチドリの場合、いま列記した三つの部位が光り輝いているのをただ一つの角度から同時に見る事は出来ません。そんな訳で、どの写真を見ても、どこかが気に入らないというか、物足りないということになります。ほとんどのハチドリの雄は喉の下の部分に、メタリックに反射する赤とか、赤紫とか、緑とか、青とかの羽毛を持っています。しかし、その部分は、観察者がハチドリを真正面から見ないとほとんど目にすることは出来ません。多分、雄が雌にアピールするのは正面からで、そのため、横からではその一番セクシーな(ハチドリにとって)部分はメタリックに光り輝いて映らないのでしょう。野鳥を撮る人達の大部分は、鳥を横から撮ることが普通なので、ハチドリの場合は、最もフォトジェニックな部分が写らない事になるのです。一方、動きの激しい、というか、落ち着きの全くない(人間的表現で)ハチドリ達は瞬時にその位置、飛翔角度を変えますので、その連続した動きを追い続ける我々人間の目には、ある瞬間にはそのメタリックで美しい羽毛が光って映るのです。ですから、後日、写真を見てみるとどうしても、「どこか違うんだよなあ。」になってしまいます。Tandayapa Bird Lodgeで出会ったアメリカ人のご夫婦が、ハチドリを撮るのは「静止画像のカメラより連続した動きの撮れるヴィデオ・ムーヴィーの方が自分たちは好きだ。」と言っていたのも尤もだなあ、と思います。