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No.132 Purple-throated Woodstar(フジノドハチドリ: Calliphlox mitchellii)

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Purple-throated Woodstar(フジノドハチドリ: Calliphlox mitchellii)"です。

Purple-throated Woodstar(フジノドハチドリ: Calliphlox mitchellii)

手前のPurple-throated Woodstar(フジノドハチドリ)の紫色の部分は写っていますが、奥の鳥のその部分はグレーにしか写っていません。その反面、頭や背の羽の色は奥の方がまだイメージに近いかなあ、と思います。

もう少し他の野鳥、特にLa Costa(海岸地帯)のバナナ園内とその周辺の野鳥を扱ってから、アンデス山麓の野鳥に戻れば良いのでしょうが、今、手持ちの画像のストックとそのバランスを考えると、ここで再びハチドリを始めとするアンデス西山麓の野鳥に戻らないと、のちほど掲載画像の順番が変則になってしまうという私個人の一方的な理由によって、またハチドリを載せることにしました。手持ち画像のアンバランス(量ではなく写っている種の多様性で)を生じてしまったのは、第一に、このhome pageを始めてから暫くはバナナ園内の野鳥ばかりを続けて掲載していたこと、第二に、これはもっと根源的で、生態系的に深刻な問題を内包していることなのですが、いくら私が「エクァドールのバナナ園には、他の地域のバナナ園、あるいは近代農業・牧畜を経営している圃場(ほじょう)と比較すると、実に多くの野鳥を始めとする動植物が見られます。」と言ったところで、樹木を伐採し、原野を開拓して農牧業を営むということは、一方でその地から野生動植物を追いやるという面を併せ持っています。このことから、確かにエクァドールのバナナ園には(と言ってもすべてのバナナ農園ではありませんが)未だ他と比較して、多くの野鳥や、魚、昆虫、両生類、爬虫類、そして小型の哺乳類も見られるものの、Tandayapa, Bella Vista, Mindo, Yanacochaなどに代表される熱帯雲霧林地帯を広く抱えるMindo-Nambillo(ミンド・ナンビージョ)地区に棲息している動植物の多種多様性とは所詮比較すること自体がナンセンスで、アンデス西山麓で撮った野鳥の種類の方が遥かに多様なのは言うまでもありません。別な言い方をすると、私達が扱っているバナナ園では数の面からは多くの野鳥を眼にします。しかしこれらの鳥は、たまに迷い込んで来る野鳥もいるものの、その大部分はバナナ園という単一作物を作る広い地に、新たに適応できた野鳥がほとんどですので、何百、あるいは数千に上るかも知れない多様な植物群が作り上げている熱帯雲霧林に、数百万年以上の長い年月を掛けて適応して来た野鳥の種類の豊富さとは桁が違います。そんな訳で、暫くはLa Costaの野鳥を扱った後、アンデス西山麓の野鳥に戻る間隔が短めになります。ご理解下さい。

Purple-throated Woodstar(フジノドハチドリ: Calliphlox mitchellii)

ホヴァリングしているフジノドハチドリにかなりピントは合っていると思いますが、喉の紫色は全く出ていません。

今回取上げるPurple-throated Woodstar(フジノドハチドリ)は海抜約1800メートルの所にあるTandayapa Bird Lodgeで撮ったものです。この活火山Pichinchaの西山麓に展開するMindo-Nambillo地区では、高さが約400メートル変わると何種かの違った種が新たに混じって来るようで、同時に、いくつかの種の目撃数が減って来ます。このPurple-throated WoodstarはここTandayapaでは普通に見られますが、海抜1400メートルのMindoの谷ではWhite-bellied Woodstar(シロハラチビハチドリ)が多くなります。しかし、この二種のハチドリは良く似ているので、慣れない内は識別に頭を抱えます。チビハチドリに限らず、ハチドリの同定の難しさは今まで何回も書いて来たので、ここで復、繰り返すつもりはありません。ただ、私ども素人にとっては、プロの方が言うように、「ちょっと難しい・・・」と言ったレベルではない事だけは確かです。

一例として、ハチドリの羽は光の反射する角度によって見る者の目には全く違った色に映りますので、その点について前もって、専門家の方から予備知識をいただいているか、現場でその説明を受けないと、日本から来て初めて中南米でハチドリの観察をされるバーダーは同じ種類のハチドリを見ているのに、異なった二種のハチドリを見ているのかと勘違いすることでしょう。フジノドにせよ、シロハラにせよ、光とのある限定された角度内に入ると喉の下部にある部分が綺麗な紫色に光り、はっきりと目で認識できる、あるいは撮る事が出来るのですが、ちょっとでも角度が違うと、写真でもピントが合っているかいないかに関わりなく、その部分は濃いグレーにしか写りません。このような現象は他の多くのハチドリの雄を観測したり、撮影したりしている時には誰もが経験します。その見えたり見えなかったりする色が、赤であったり、紫であったり、ラケットハチドリの場合のようにメタリック・グリーンであったりします。したがって、目で追いながら、網膜に捕らえているハチドリの色とそのイメージは幻想的に、そして、美しく瞬時に変化して行き、その残像が記憶に残っていますので、写真に撮ったハチドリの画像はほとんどの場合、各自が大事に抱いているイメージとは大きく異なります。私の写真技術では、50枚に1枚ぐらいしかそのハチドリに抱いているイメージに近いものは撮れません。自分が求めるあるハチドリのイメージにかなり近いものを撮ろうとしたら、2分にいっぺんはヴェランダに必ず戻ってくるような種であっても、半日はロッジのヴェランダの椅子に座り込んでシャッターを切り続けていないと、撮れないだろうと思います。勿論、運が良ければ別ですが。