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No.129 Fulvous Whistling-Duck

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Fulvous Whistling-Duck(アカリュウキュウガモ Dendrocygna bicolor)"です。

Fulvous Whistling-Duck(アカリュウキュウガモ Dendrocygna bicolor)

Sra. Andradeのサニート・バナナ農園“San Marcos”の貯水池に群れていたFluvous Whistling-Duckと草でマウンド状に作り上げた巣の上から周りを見ていたGreen Iguana。

今度はバナナ園の中や周辺で見られる水鳥を3回続けたいと思います。この写真は前回1月の出張の際、産地インスペクターの友人達と、Mocache(モカチェ)市の女性市長さんセニョーラ・アンドラーデの農園を訪れたときに撮ったものです。その日は雨季に入っているにもかかわらず、約1ヶ月も遅れていた降雨がやっと始まって、農業関係者、特に水稲栽培者達がほっとしていた日でした。バナナ農園は、小規模なもの以外はほとんどすべての所で給水用スプリンクラーが完備しているので、雨が降らなくても農園主がパニックになることはありませんが、コスト上からも、雨水を利用した方がはるかに安上がりなので、雨季には雨を待ち望みます。エクァドールでは乾季、5月からクリスマスまではほとんど雨が降りませんので、アンデス西山麓に降る霧雨やそこに懸る濃霧が頼りとなります。雲霧林はハチドリ達やメガネグマ達の棲家を作るだけでなく、La Costa(海岸地帯)の河川を一年中豊富な水量で満たし、そこで営まれる農牧業をも支えているのです。

以前からアンドラーデさんは、San Marcos農園にある2箇所の貯水池にたくさんの鴨がやって来て、壮観な眺めになりますよ、と私に教えてくれていたのですが、実際に二百羽を超える大きな鴨達が貯水池一杯に群れているのを見るのは、素晴らしいものでした。飛び立つ群れにレンズを向けたり、泳いでいる鴨達にシャッターを押したりしているうちに、足元の崖の所へ数羽の鴨がやって来たので、レンズの焦点をこちらに合わせてシャッターを押そうとしたとき、何か大きなものがごそっという感じで動きました。ファインダーの中で目を凝らして見ると、それはゆうに1.5メートルを超える大きなイグアナが、草をマウンド状に積み重ねた巣の上から周りを見回しているところでした。この池にはカイマン鰐が棲んでいると聞いた事もあったので、一瞬、鰐の巣の上にイグアナがいるのかと思ったのですが、鰐がいるにしてはイグアナも鴨や他の水鳥たちも落ち着き払っていたので、ちょっと変だなあ、と考えていました。ほんの一瞬他の水鳥にレンズを向けている間に、イグアナの姿が見えなくなっていたことから、あの草のマウンドに潜り込んだのだろうなあ、それしかないと思いました。後日、2年前にTVクルーとその池をボートで回ったことのある息子と写真を見ながら話したのは、多分農園労働者がカイマンを見たというのは、この大きなイグアナを見間違えたのではないかという事でした。実際、息子とTVクルーは池のそこここで草を積み上げて作った巣の中から顔を出しているイグアナを見たそうです。

Fulvous Whistling-Duck(アカリュウキュウガモ Dendrocygna bicolor)

一斉に飛び立ったFluvous Whistling-Duck。400ミリ(35mm換算では640mm)の望遠レンズでは大きな群れのほんの一部しか写せませんでした。

乾季にもこの鴨の群れをそのTVクルーが撮影していますので、このFulvous Whistling-Duckは渡りをしないのか、あるいは渡りをするものと居付きのものが共生しているのか、はたまた、北へ渡るものと南へ渡るものの両方が交互に赤道直下のエクァドールにやって来るのかどうかも、分かりません。また、この鴨は次回に取り上げる予定のBlack-bellied Whistling-Duckよりも人間を怖がらない様に思いますが、それはこの鴨の肉がBlack-belliedのものよりも美味しくないのか、それともアンドラーデさんの農園では、オーナーの指示で鴨を撃たないようにしているから、此処では鴨がある程度の距離まで人間が近づいても逃げない一方、Chongon貯水湖の周りは未だ猟をする近在の住民がいるので、ChongonのBlack-belliedは人間との距離を遠く保つようにしているのかどうかも分かりません。分からない事ばかりで申し訳ありません。