オリートの産地La Mana地区にある有機栽培のオリート農園“Oro Verde(緑色の黄金)”の中で餌を獲るので、落ち葉や腐植土で嘴を汚していたハチクイモドキ。私の出現に腹を立てていたようです。後ろに写っている紫色の果物は、オリートと混栽されているカカオの実です。
過去にも扱ったバナナ園内の3野鳥の最後は、俗名“Culebrero(蛇使い)”と呼ばれるBlue-crowned Motmot和名ハチクイモドキです。前のときにも書きましたが、La Costa(海岸地帯)の野鳥や野生動物に詳しい仲間達に聞くと、誰もがこの鳥のことを“Culebrero”と呼ぶので、本当にハチクイモドキはLa Costa一番の猛毒の蛇”X”(学名:Bothrops Atrox)といつも行動を共にしているのかどうか真剣に知りたいと思っていました。何と言っても、ハチクイモドキは美しく魅力的な野鳥なので、私はこの鳥を見つけたら、必ず車を止めてシャッターを切るからです。もちろん、Xを気にして、草むらや藪の中にはやたら足を踏み入れませんが。Xにしたところで、そこらじゅうにいる訳ではありませんし、人間に見つかれば、たとえ、人間に噛み付けたところで、十中八九は殺されますから、やたらと人の前には自分から出て来ることは少ないようです。Cerro Blancoでヴォランティアーを務め、生物学の爬虫類を専攻している大学生の説明によると、この蛇も攻撃されなければ、自分から人間に攻撃を仕掛けることはないと言っていましたし、自分のテリトリーに侵入して来ない限り、警告を発するだけだそうですが、普通の人間には何処からが彼のテリトリーなのかは分かりません。また、なにせ物凄く気性の荒い蛇ですから油断は禁物で、私は当然、此処の人たちも細心の注意を払っています。
Frushi Groupの“Paraiso”農園の脇にあるブッシュの中にいたハチクモドキ。全身像を見るには良いポーズでした。
先日も、バナナ園廻りをしていて、道案内をしてくれたFrushi Groupのバナナ園“San Fermin”のガードマンからいろいろ教えて貰いました。彼は非番のときは、アンデス西山麓の近くの山々に犬を連れて狩に入るので、野生動物には非常に詳しいのです。例えば、La Costaではほとんど何処のバナナ園へ行っても、私が動物好きだと分かるとアルマジロの話が出て来るのですが、もう40数年もエクァドールで産地廻りをしているものの、私は未だ野生のアルマジロを見たことがありません。彼は笑いながら説明してくれました。「セニョール、それはそうですよ。貴方のバナナ園廻りは陽があるうちでしょ。アルマジロは夜にならないと出て来ないのです。昼は竹藪の根の間に入り込んで寝ていますよ。」と。こちらの竹は棘竹で、日本の孟宗竹と似たような大きさになり、何十本もの竹が密生して生えていますので、その根元の部分は、捕食動物が這入りこめないようになっており、アルマジロには格好の隠れ家を提供するようです。その彼もXとハチクイモドキが一緒にいると言われているのは本当だと言います。ハチクイモドキがXに餌(主として野鼠や野兎など)がいることを、鳴いて報せるのだそうです。彼は、何回もそんな場面に遭遇したと言っていました。ハチクイモドキにとっても多分、Xに協力することで何らかのプラスがあるのでしょう。いずれにせよ、生態形上は興味のある共存ですが、ハチクイモドキの撮影にはこれからも細心の注意を払わなければならないことを再確認しました。
今回と先回(一月)の出張中も、このハチクイモドキにはいろいろな所で会いました。前回掲載のミドリヤマセミとは対照的に、その数は増えているのではないかと思うほどです。