バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.125 Ecuadorian Trogon

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Ecuadorian Trogon (和名不明:Trogon Mesurus)"です。

Ecuadorian Trogon (和名不明:Trogon Mesurus)

Cerro Blancoの薄暗い木陰で何か木の実を食べていたEcuadorian Trogon.

今回取り上げたEcuadorian Trogonの和名はまたしても分かりませんでした。それ程マイナーな野鳥とも思えませんが、多分、私の探し方が悪いのでしょう。Trogonの類はキヌバネドリと呼ばれていますので、エクァドールキヌバネドリとでも命名されているのかもしませんね。このTrogonはLa Costa(海岸地帯)に棲息する、とガイド・ブック“The Birds of Ecuador”に説明されています。去年の9月にMindoへ行った仲間はこの野鳥を見たと言っていました。

実は、私がこの野鳥を近くでじっくり見ることが出来たのは今年の1月が初めてで、カメラに収めたのも今回が初めてでした。今までは、アンデス西山麓に広がるオリートの産地、Mana地区で遠くから見かけたことは何回かあったのですが。この写真が撮れたのは、グァヤキール市の西郊外にあるCerro Blanco(白い山塊)と呼ばれる、自然保護地帯ででした。このCerro Blancoはエクァドール有数のセメント工場の所有地で、過去にこの会社が山を崩してセメント生産を大規模に行っていた結果、海岸地帯固有の自然が急速に消滅して行くのを憂慮した自然保護活動家や一部の市民がセメント会社に善処を申し入れたところ、オーナー一族もその申し入れを受け入れ、数千町歩の所有山林を自然保護区域として保全すると約束し、現在に至っています。標高450メートル程の岩山の山塊にはLa Costa固有の植物が茂り、今は少なくなった野生哺乳動物や野鳥を見ることが出来ます。このCerro Blancoのような自然保護地域は、“Reserva Forestal(保護森林)”あるいは“Bosque natural(自然の森)”と呼ばれ、心ある大地主達の協力の下、La Costaのあちこちで見ることが出来ます。土地所有権はそのまま地主の手にありますが、樹木の伐採禁止をはじめ、鳥獣保護など、そこの自然には手をつけないという約束の下で、国家の法律的優遇も受けられるようになっています。私共のバナナのシッパーも約2000ヘクタールの山林を自然保護林として、国家の管理化に提供しています。幾つもある自然保護地帯で一般バーダーを受け入れていて有名なのは、この“Cerro Blanco”と“Chulute”で、どちらも、土曜、日曜日には若いボランティアの野鳥ガイドさん達が詰めていて、丁寧に案内してくれます。

Ecuadorian Trogon (和名不明:Trogon Mesurus)

逃げられたと思ったEcuadorian Trogonは明るい木の枝に止ってくれましたが、ちょっと距離がありました。

その日、初めてCerro Blancoに行った私は、ガイドさんの案内で険しい岩肌に作られた山路を、息を切らせ切らせ、今は見る機会のめっきり減った数種類のLa Costa地区固有の野鳥を写真に収めながら400メートルの尾根にやって来ました。すると、Mana地区で聞きなれた野鳩の鳴き声が聞こえて来たので、「この鳩はなんと言う名前ですか。」と訊くと、「Es Trogon que buscabamos. (探していたトロゴンですよ。)」と、教えてくれました。その時まで、この声はてっきり種類は知らなくても野鳩のものだ、と決め込んでいた私は大喜びで、樹木の間にTrogonを探し始めたのですが、全く、見つけることは出来ませんでした。「声はすれども、姿は見えず、か。」と、半ば諦めていたら、私に同行してくれていた運転手のラファエルが、「セニョール、ほら、あそこ。」と、指差してくれました。逃げられたら大変だと心配しながら、撮ったのがこの2枚の写真です。