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No.122 Booted Racket-Tail

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Booted Racket-Tail (ラケットハチドリ:Ocreatus underwoodii)"です。

Booted Racket-Tail (ラケットハチドリ:Ocreatus underwoodii)

3羽のBooted Racket-Tailが、フィーダーが空いたので早速飛んで来て占拠。ネクターを一気飲みして、一息付いているところ。鳥達から僅か2メートル程の所にいた私は、2歩下がって100-400mmの望遠ズームを標準側に引き戻さねばなりませんでした。

今回と次回、その次は最近の出張の折、強引に取った休暇ではじめて訪れたアンデス西山脈に位置し、首都Quito(キートと発音します)を見守るように聳えている海抜4,675メートルの活火山Pichincha(ピチンチャ)のとてつもなく広い西山麓にある二つのバード・ウォッチングの名所で撮ったハチドリを載せます。ピチンチャ西山麓は、雲霧林を中心にした19,000ヘクタール強の自然保護区から成る、バーダーには有名な、かのMindo, Tandayapa, Bellavista, Yanacochaなどを含む、標高4,000メートルから1,000メートルに至る変化に富んだ原生林をその懐に抱いた、世界のマニアックなバーダー達に人気の高い場所です。私は、今までその中のMindoにしか行ったことはありませんでした。その理由は、Mindoだけが北のバナナ園に比較的近い所にあるからです。

Yanacocha(ヤナコーチャ)にどうしても行きたいな、と思うようになったのは、去年の夏、4チャンネルの科学情報番組「所さんの目がテン」の撮影班がエクァドールへ行ってくれたとき、アンデス担当班がYanacochaへ入って、あの一風変わった「ヤリハシハチドリ(槍嘴ハチドリ)」を撮って、番組の中で放映したの見ていたからです。


Booted Racket-Tail (ラケットハチドリ:Ocreatus underwoodii)

裏山の鳥見を早々と切り上げて、ヴェランダに戻ってみると、雄のBooted Racket-Tailが静かに枝に止まっていました。お腹がひとまず一杯になっていたのでしょう。

産地視察の仲間達とたまに、ウィーク・エンドをQuitoで過ごすことになっても、皆で見る所は、ユネスコの人類文化遺産として世界で初めて登録されたQuitoの旧市街であったり、先住民族自治区のようなオタヴァロにあるインディオ市場、コタカチの皮革工芸町だったりしますので、時間の関係上YanacochaやTandayapaに行くことはありませんでした。Quitoではいつも泊まっているSwissotelにYanacocha行きのバード・ウォッチングを頼んだところ、YanacochaとTandayapaをセットにしたツァーがお薦めだと言うインフォーメイションを貰いました。私がよく拝見させて頂いているコスタ・リカ在住バーダーの方のホーム・ペイジでTandayapa Valleyを非常に高く評価されているのを思い出して、即座にOKを出しました。当日は、ガイドをしてくれた若いバーダー“Danny”の薦めで先ずTandayapaに行き、その後Yanacochaに行くことにしました。途中ツグミ、ハチドリ、タイランチョウ、チョウゲンボウ、ハト類等の写真を撮りながらTandayapa Valleyにやって来ました。ただし、何処からがTandayapaなのかどうかは、日本の道路を走っているときのように、自治体の境界に来ると標識があるという訳ではありませんので、ガイドさんが、「もうこの辺りがTandayapaです。」と言ってくれた所がTandayapaだったのでしょう。大きな峡谷の両サイドは深い原生雲霧林ですから、境界等というものは我々バーダーには殆ど意味がありません。道路脇の大きな、苔だらけの古木の樹冠部で鳥達の動き回るのが目に入ったので、車を止めて野鳥の同定を始めました。そのとき、谷の向こう側の山腹から今まで聞いたことのない鷲鷹類の鳴き声が聞こえて来ました。さすがガイドをしているだけにDannyは、200メートルはある対岸の鬱蒼とした雲霧林の中で、ブロメリアが寄生した古木の枝で白い若鳥が鳴いているのを双眼鏡で捉え、私に教えてくれました。さっき迄雨が降っていた曇り空の雲霧林で鳴いている鳥はあまりに距離があり過ぎて、シャッターを切ったものの、液晶モニターで確認しようとしても、如何ともしようがないので、持参して来たExtender 1.4を取り付けてマニュアル・フォーカスでシャッターを切りました。が、しかし、そんなことではどうなるものでもなく、画像は不鮮明で、「参ったなあ。」を繰り返していると、突然、その若鳥が飛び立ったので、慌ててまたシャッターを切りました。ただ、それまで止って鳴いているのを撮っていたため、FocusをAl Servoにしていなかったので、写真にはなっていませんでしたが、尾羽の模様だけはなんとか識別できる程度に写っていました。四輪駆動車の運転を受持っていたもう一人のバーダーと3人で、早速The Birds of Ecuadorを引っ張り出して、鷲鷹のイラストと照合したところ、その若鳥は「Black-and-chestnut Eagle」に間違いないと二人のバーダーが断言しました。この鷲は非常に少なくなっていますので、この僥倖に嬉しくなって、車を降り、足取りも軽く、Tandayapa Valley Lodgeに向かいました。ハチドリでも見ながらゆっくりコーヒーを飲もうと小さなロビーを横切ってウッド・デッキに出てみると、頭の上を、「ぷんぷん」と聞こえるハチドリ特有の羽音をさせながら、木々に遮られた狭い視界の中を、数種類のハチドリが同時に30羽以上で、四つのフィーダーの周りを飛び交っていました。その小さな鳥たちはとても美しく、今まで私が見ていないハチドリ達でした。数秒もしないうちにまた次の小さなグループがやって来て、フィーダーを占拠します。もう、コーヒーどころではありません。ウッド・デッキにいた僅か一時間程の間に、ここで通常見られる18種類のうち12種を見ることが出来、証拠写真を含めるとその12種が撮れました。色鮮やかで、ラケット尾羽を持ったものや、コバルト・ブルーに輝くものなど、少なくとも延べ200羽以上のハチドリが文字通り乱舞する中に立ちつくしていた時間は、安っぽい表現ですが、この世のものとは思えませんでした。もしも、今にも雨が降りそうな空模様ではなく、天気が良く、ハチドリ達の羽に陽光が反射されていたら、どんなだったのだろうと、とても懐かしく想い出します。