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No.120 Yellow-Rumped Cacique

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Yellow-Rumped Cacique (キゴシツリスドリ:Cacicus cela)"です。

Yellow-Rumped Cacique (キゴシツリスドリ:Cacicus cela)

Frushi Groupのバナナ園、“Envidia 5”脇のケヴェド川川岸でとったYellow-rumped Cacique。

このコラムをいつも見ていただいていた皆様には、この4週間なんの挨拶、知らせもなく第119回のYellow-tailed OrioleをUpしてから本日まで同じ写真、同じコメントを載せたままでいましたことを深くお詫びいたします。1月6日の金曜日の午後に突然、9日の日に開かれる会議のため急遽エクァドールに来るよう本社から指令が来て、取る物も取り敢えずといった有様で日本を発ちました。その時にはまさか一ヶ月弱の滞在になるとは思ってもいなかったので、ホーム・ペイジの次の準備もせず南米に向かいました。滞在中に産地廻りをすることは当然と思っていましたので、ひとまずデジ一眼2台と100-400の望遠ズームと17-85の標準ズームだけは携帯しました。この滞在中、「400ミリではちょっと足りないなあ。」と思うことが度々でしたが、「画角が640ミリ相当になるし、これを持っているだけでも良いか…」と思い直してャッターを押し続けました。ただ、業務用の小型ラップトップしか携行していないので、これには画像を取り込んだり圧縮したりするソフトを組み込んでいないため、せっかく撮った写真もインター・ネットで送ることができず、4週間も同じ画像を貼り付けたままにせざるを得ない仕儀と相成りました。これに懲りず、今後もこのコラムを見続けていただければ幸いです。

第16回のところで、Lemon-rumped Tanagerの写真をこのYellow-rumped Caciqueとして載せて、訂正したことがありました。その時も弁解したのですが、私はこのYellow-rumped Cacique とLemon-rumped Tanagerを混同しており、後でその間違いに気が付き、お詫びすると同時に、今度はしっかり本当のYellow-rumped Caciqueを撮ってUpしようと心に決めておりました。今回の延べ九日に亘った産地廻りと四日の個人的鳥見の間にも、この2種の紛らわしい野鳥には何回も会いました。遠くで見ると私には殆ど区別の付かない2種ですが、近くで見ると、嘴の形と長さ、尾の形など幾つか明らかな違いが良く分かりました。特に気が付いた点は、Cacique(カシーケと発音します)はとても変化に富んだ、表現によっては可愛らしい鳴き方を何通りも持っていますが、Tanagerの方は人がその鳴き声を楽しむといったような鳴き方はしないようです。この事からも、もう43年前、初めてエクァドールに赴任した若い東洋人の脇を竹篭に入れた鳥を売り歩いて行ったインディヘナの親子が持っていたのは、このカシーケだったことに確信を持ちました。

Yellow-Rumped Cacique (キゴシツリスドリ:Cacicus cela)

Chongon用水湖の岸辺でしきりに、囀りながら餌を取っていたYellow-rumped Cacique。

Cacique(カシーケ:和訳、首領、ボス、親方)と言う名前の由来は、この鳥は様々な鳥の鳴き声を真似るので「鳥たちの親玉」と原住民が呼んでいたのをスペイン語でそのままカシーケとしたのでそうです。今度の出張で、グァヤキール市自然保護区“Cerro Blanco”のボランティアからこう説明されるまでは、鷹や体長が50センチ以上ある、つまり自分の体の3倍近くもあるWhite-Tailed Jayにさえ立ち向かって行くその勇敢さ故にカシーケと呼ばれるのかと思っていました。

左側の写真は、今まで度々取り上げてきたMocache(モカチェ)市の女性市長さん、Sra. Andradeの農園からケヴェド川の対岸を10キロメートルちょっと南へ下がった所に在る農園“Envidia 5”の脇の川岸に生えている、名前は知らないのですが、殻に覆われた木の実を付ける十数本の大きな木に群れていたカシーケを撮ったものです。その時も、日本の冬から熱帯の雨季特有の強い直射日光に晒されるエクァドールにやって来たのと、14時間の時差に未だ慣れていないのとで、車の中でうとうとしていました。「セニョール・イート。あの黒と黄色の綺麗な鳥に興味はないのですか。」と起こされ、指差された方を見ると20羽程の野鳥が枝から枝、木から木へ飛び廻っていました。「ああ、Lemon-Rumped Tanagerか。」と一瞬思ったのですが、いつもとは飛び方が違うので、「オリートを食べている時と違って、あの木の実を食べると興奮するのかなあ。まあ、こんな経験は初めてだから、写真でも撮るか。」と、車を降りて、群れの方へ足元を気にしながら近づいて行きました。ところが、ある一定の距離迄近づくと、その群れは次々と他の木に飛んで行ってしまい、400ミリでは特徴を確認できませんでした。「ばかに警戒心の強いLemon-rumped Tanagerだなあ。」と独り言を言いながら、後を追うのに疲れてしまって、車のところへ戻り、いかにも熱帯の川岸といった風情の風景を撮っていると、あの群れが私の脇の樹にやって来ました。今度は距離がかなり近いので、400ミリでもその特徴が十分確認でき、数回シャッターを切ったあとカメラ背面の液晶モニターで良く見ると、思わず「Yellow-rumped Caciqueじゃないか。カシーケだ。カシーケだよ。」と大声を出し、夢中でシャッターを切り続けました。「セニョール、この鳥はこの時期になるとここにやって来るんですよ。」と同行のインスペクターが教えてくれました。その後もLa Costa(海岸地帯)のあちらこちらでこのカシーケを見かけました。どうも、Lemon-rumped Tanagerの方が同地方ではカシーケより少ないような気がします。