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No.116 Ruddy Turnstone

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Ruddy Turnstone ( キョウジョウシギ: Arenaria interpres)"です。

Ruddy Turnstone ( キョウジョウシギ: Arenaria interpres)

Plaza del Sur 島の磯で餌探しの合間に一休みしていた Ruddy Turnstone( キョウジョウシギ ) 。ガイド・ブックによれば、この鳥はいつも忙しなく動き回っていて、じっとしていることが殆どない鳥だそうですから、良いシャッター・チャンスだったようです。

キョウジョウシギは大陸の太平洋沿岸地帯にも棲息していますし、この写真を撮ったガラパゴス諸島の磯でも良く見られます。このシギの名前の前には“ Galapagos ”と付いていませんので、ガラパゴスの固有種、あるいは固有の亜種でないことが分かります。例えば、前々回に掲載した“ Galapagos Great Blue Heron( ガラパゴスオオアオサギ ) ”、第 44 回の“ Galapagos Dove ”、第 63 回の“ Galapagos Short-eared Owl ”、第 101 回の“ Galapagos Masked Booby ”等です。中には、第 11 回の“ Yellow Warbler ”はどうも正確には“ Galapagos Yellow Warbler( ガラパゴスキイロアメリカムシクイ ) ”と言うらしいのですが、良く読ませていただいているコスタリカ在住バーダーの方のホーム・ペイジには、 Yellow Warbler と Mangrove Yellow Warbler は違うのではないかという趣旨の意見が書かれていました。その根拠は Mangrove Yellow Warbler の頭部には赤茶色の羽毛があることだと指摘されています。ガラパゴスキイロアメリカムシクイの頭部にも赤茶色の羽毛がありますし、棲息しているのもマングローブ林の中とその周辺が多いので、あるいは将来、名前が変更されて“ Galapagos Mangrove Yellow Warbler ”となるかもしれませんね。話を戻してキョウジョウシギですが、大陸沿岸部のキョウジョウシギは南から渡って来るので、多分、ガラパゴスのキョウジョウシギも南からやって来るのでしょう。それに関する説明は私の持っているガラパゴス・ガイド・ブックにはありません。この鳥は、磯にいる小蟹や貝類、無脊椎動物などを普段は食べているようですが、その他にも、同諸島に何千頭も棲息しているガラパゴス・アシカが出産時に後産で体外に出す胎盤をも食べます。そんな光景を写真集で見た事があります。

Ruddy Turnstone ( キョウジョウシギ: Arenaria interpres)

同じ場所で小蟹を追っていた二羽のキョウジョウシギ。3羽のグループだったと記憶しています。大きな群れを作ることはあまりない海鳥だとガイド・ブックには書かれています。

ガラパゴス諸島では海鳥、陸鳥など亜種を含めて約 70 種近くの野鳥が見られるのだそうですが、野鳥専門のツアーがあるとは聞いたことがありません。一度だけ、欧米からの 15 名程のグループとサンタ・クルース島のレストランで昼食時に会ったことがあります。あと 2 種類を見ると、目標を達成すると言ってワイワイやっていました。目標数とは 70 種なのか、或いはある特定の野鳥達をガラパゴスに出発する前に、見ようと決めて来たのかは聞きませんでした。ガラパゴスに来る観光客は、ゾウガメ、ウミイグアナ、リクイグアナなどの爬虫類、鳥類ではペンギン、コバネウ、アオアシカツオドリ、 mating season に入って喉袋を真っ赤に膨らませたグンカンチョウ、種の起源で有名なダーウィン・フィンチなどを広く浅く見て行く人々が一般的なようです。また、ヨーロッパやアメリカの多くの海岸地帯では珍しくはないはずのペリカンが、意外に人気があるのに驚かされます。たしかに専門的に、爬虫類や野鳥、鯨、魚類を観察する目的でやって来る人々も大勢いますが、何と言っても、「ガラパゴスというのは、地球上でも変わった動物がたくさん見られる所らしいから一度行ってみたいなあ。」という様な感覚で来る観光客が大部分のような印象を持ちます。繰り返し中長期に亘って滞在型の訪問を経験した人を除いては、巨大なゾウガメや、真っ赤なゴム風船のように喉を膨らませたグンカンチョウ、真っ青な足を交互に踏み変えて翼を目一杯広げて求愛ダンスをするアオアシカツオドリなどを、ガラパゴス固有の自然の中で眼前 1 メートルから 2 、 3 メートルの所で見ると、殆どの人がまず例外なく普通の観光客になって、知らないうちに「すごいなあ。」「すごいわね。」を連発しているでしょう。そんな観光客になってしまったバーダーには、余程特別な思い入れがない限り、地味な Petrel (ミズナギドリ・ウミツバメ類)、シギ、チギなどは印象が薄く、レンズを向けることもなく帰国することになる人が大部分のようです。私も当然例外ではありませんでした。このキョウジョウシギも地味な野鳥の一つになってしまうのです。そういう意味では、ガラパゴス諸島は野鳥観察に集中でき難いので、バーダーにとっては理想的な訪問地ではないかも知れませんね。それでも、誰にとっても一見の価値のある場所であるのは間違いないでしょう。