バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.113 Plain-brown woodcreeper & Streak-headed woodcreeper

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Plain-brown woodcreeper (コオニキバシリ:Dendrocincla fuliginosa) & Streak-headed woodcreeper (シマガシラキバシリ:Lepidocolaptes Souleyetii)"です。

Plain-brown woodcreeper (コオニキバシリ:Dendrocincla fuliginosa)

有機オリート農園“ Oro Verde” で、うまくオリートの葉っぱがバックになる位置でシャッターが切れたのですが・・・手持ちでキバシリを撮るのは無謀ですね。かと言って、三脚にセットしたカメラでこの幹の周りをすばしっこくクルクルまわるキバシリが私に撮れるかというと、これも疑問符。

第 110 回のチャムネエメラルドハチドリのことを書いた後、ハチドリを追って La Costa( 沿岸地域 ) からアンデスへ行ってしまいました。これを好奇心の寄り道というか、こだわりと呼ぶべきかは私自身にもわかりません。今回は再び La Costa に戻ってオリートの産地“ Mana” 地区で撮ったキバシリにしました。この日本のコゲラよりもちょこまかと動き回り、じっとすることのほとんどない鳥キバシリは、未だ原生林も残り、二次林の木々も鬱蒼と茂っている野鳥観察保護区“ Mindo ”へ行けば頻繁に見ることの出来る野鳥の一つですが、大規模単作近代農業が発達した La Costa のバナナ園ではあまり目にしません。もちろん、農園の脇の林へ入って行けば出会いますが、バナナ園をジープで走り回っていて簡単に見る野鳥ではありません。ただ、バナナ農園内の長い並木を車で通り過ぎるとき、キバシリが飛び立って行くのを見たことは何回かあります。

アンデス山麓に続く“ Mana” 地区には、未だ古木、喬木が、その本数は昔よりはずうっと少なくなっていても、二次林やオリート農園の中に残っていることと、オリート自体が近代農業技術によって改良を重ねて作り出されたような果物ではなく、かなり原始的というか、野性種の特徴を多く残しているため、普通のバナナよりも栽培が簡単で手が掛からず有機栽培、特別栽培(減農薬栽培)がしやすい上、時代の流れに乗って有機のオリートを作る人達が増えていることから、農業地帯の割には自然環境が保存されています。こんなことも、 Mana 地区では未だ多くの野鳥種を見る事が出来る理由の一つだと思います。それでも十数年前までは、この地域に今のようには農業開発の手が伸びていなかったので、村と村を結ぶ、日本流に表現すると「数十年も働き続けたガタピシ・バス」がでこぼこ道を、車体を左右に揺すりながら通り過ぎて行くたびに、梢で待っていた様々な seed-eater 達が舗装されていない土の道に舞い降りてきて野草の実を啄ばむのを見るのが普通でしたが、今はいつも見る種の野鳥しか目にしません。

Streak-headed woodcreeper (シマガシラキバシリ:Lepidocolaptes Souleyetii)

オリート農園“ La Selvita” で見たシマガシラキバシリ。今度出会ったら、デジ一眼で ISO 1600 まで増感して、シャッター・スピードを上げて、ブレを押さえてぜひ撮りたいと思っています。

しかし、一度土埃の舞い上がる幹線道路を離れてオリートの農園に入ると、様々な野鳥の囀りと侵入者を警戒する鳥達の声が聞こえてきます。早朝にこの地域に入った事はないのですが、黄昏時になると、「えっ、こんな鳥までいるんだ。」というようなかなり珍しい野鳥まで見ることができます。オリート農園内で頻繁に目にする野鳥は、 Social Flycatcher, Masked-water Tyrant 等に代表されるタイランチョウ、 Lemon-rumped Tanager 、 Blue-gray Tanager 等のフウキンチョウ、ハチドリ、ツグミ、鷹類、そして、運が良ければ Rufous Motmot や Blue-crowned Motmot などです。

その日も、今は有機栽培のヨーロッパ認証を取得しているオリート農園“ Oro Verde” に入り、畑の状態を見ていました。虫を取っている Ecuadorian Thrush や、収穫の際に過熟などの理由で農園内に放置され黄色くなったオリートの実を啄ばんでいた Lemon-rumped Tanager の幾つかの小さな群れが動き回っている中に、オリートの幹(正確には茎)の周りをキツツキのような小刻みな動作で動き回っている鳥がいました。 Mana のオリート農園ではよくキツツキを見ますので、「ああ、キツツキか。」と思ったのですが、その鳥がせわしなく幹の周りを動き回っていたので、直ぐにキバシリだと気が付きました。その後、うら若きおてんば跡取り娘がいるので有名なオリート農園を訪れて、そこのお嬢さんがオレンジの木に登って実を取ってくれていた間、農園に入ってくる道の脇に生えている一本の高い古木の幹にいた顎の下の皮膚が扇のように開く小さなトカゲの写真を撮っていました。何気なく隣の同じような高さの喬木に目を移すと、幹の周りをせわしなく回転しながら上へ登っていくシマガシラキバシリを見つけ、シャッターを切りました。