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No.112 Woodstar

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Woodstar (チビハチドリ) "です。

Woodstar (チビハチドリ)

縄張りを見張っているアオミミハチドリの隙を突いて次々にやって来る様々なハチドリに混じってフィーダーに辿り着いた名称不明のチビハチドリ。

今回掲載したチビハチドリの同定( identification )がまたしても出来ませんでしたので、単に Woodstar( チビハチドリ ) としました。私がいつも参照している“ The Birds of Ecuador” には131種のハチドリのイラストが載っており、雌雄 の外観が異なっているものは、その両方が描かれ、若鳥が雌にも似ていない場合はそのイラストもありますが、このチビハチドリはそのどれとも異なっているので、今まで何回かやって来たような、納得出来ないままに決め付けるようなことはしない事にしました。例えば、第 82 回のロイヤル・ブルーに輝くハチドリをアオミミハチドリとしたり、第 93 回のインコを尾羽の模様が明らかに違っているのに Amazona Amazonia としたり、第 100 回の鷹を Roadside Hawk とした事などです。その理由は、第 99 回に名称不明として載せた黒っぽいハチドリは上記のガイド・ブックにはそれに似たイラストは見つからなかったのですが、偶々、先日暇つぶしに見ていたエクァドールの Libro rojo de las aves del Ecuador (Red Data Book of Ecuadorian birds) の 90 ページにこのハチドリに良く似たイラストが“ En Peligro critico(Critical danger: ranked V) ”名称は ”Black-breasted Puffleg” として載っていたので、 The Birds of Ecuador で再びこの名前のハチドリを探してみました。確かに、このガイド・ブックにも Black-breasted Puffleg が載っているのですが、イラストされた羽の色、嘴の形はレッド・データ・ブックのものとはかなり違っていました。学問的にそんなに貴重な鳥であったとしたら、軽々しく素人の推測で identify するべきではないと考えたのと、これだけ優れたガイド・ブックであっても、幾つかのイラストは、太陽光の下、生きて活動している瞬間のハチドリの羽色とは異なっているものがあるのではないかと推測したからです。

例えば、一枚目に載せた写真で言いますと、私は最初この鳥をアンデス高地では一般的なチビハチドリ、“ White-bellied woodstar ( シロハラチビハチドリ: Acestrura mulsant) ”の雌ではないかと仮定してガイド・ブックのイラストと対照して見ましたが、喉の下の、写真では黒く写っている部分が雌にはないし、もし、雄だとすれば、その部分はピンクがかった赤であって、黒や濃緑色ではありません。次に、“ Purple-collared woodstar ( オオギオハチドリ: Myrtis fanny) ”かも知れない、鮮やかな空色が光の加減で黒っぽく映ったのかとも思ったのですが、この写真にある嘴の下部にある白い部分がイラストにはない事、そして棲息域が一致しないことから、これでもないことが明らかとなって途方に暮れてしまいました。

Woodstar (チビハチドリ)

侵入して来たライバルのアオミミハチドリを追い掛けて縄張りを離れたハチドリの留守を利用してたっぷりネクターを吸って、食後の一休みをしていたチビハチドリ。

ハチドリの種を特定する難しさはこのくらいにして、ここでは、この写真を含めて今迄様々な野鳥を撮らせてもらった高級フランス料理レストラン“ Mirage” と外人観光客の人気を二分する、スペイン統治時代の荘園の雰囲気を保ったまま、郷土料理や一般的料理を出し、週末にはフォルクローレのバンドを入れる“ Cholavi ”について簡単に触れたいと思います。

ガラパゴス諸島観光に行かれた日本からの旅行者の方々は、おそらく、アンデスの雰囲気を体験してもらおうという旅行社の配慮で、エクァドール到着の翌日は、この Cholavi に行かれた事と思います。そして、何十というテーブルが欧米からの観光客で一杯になっているのを見てまず驚かれ、アンデス音楽を聴きながらの食事にエクァドールに来た事を実感されたことでしょう。一方、“ Mirage” は、ガラス張りの白い建物を中心として、レストランの裏手に果樹園を配し、前庭は数百坪の良く手入れされた芝生とハチドリ用のフィーダーを吊るした庭木からなる、落ち着いたホスタルです。したがって、食事に来る客は、週末の Almuerzo( 昼食 ) を郊外の瀟洒なレストランで取ろうとわざわざ首都キートから 2 時間かけて来るファミリーの人達が多く、観光客は少人数のグループが大部分です。そんな訳で、 Cholavi のような騒々しい雰囲気は殆どなく、かなり凝った食事を楽しめます。ただし、皆さんはスポーティな格好で来られるので、大きなレンズを装着したカメラを担いだ日本人が来て、フィーダーの傍の席から窓外のハチドリを撮っていても大目に見て貰っています。もちろん、ファミリーで来ていますから子供たちは行儀の良い子達ばかりではないので、こんな時は、普段鬱陶しいと思うマナーの悪い子供たちに気楽にさせてもらえます。