レストラン“ Mirage” のハチドリ観察特別テーブル(?)から窓越しに、アオミミハチドリの監視の隙を突いてフィーダーにやって来たバラノドチビハチドリを撮ったもの。
今回掲載したハチドリの写真は、ガイド・ブック ”The Birds of Ecuador” を参照した結果、例によって繰り返し繰り返し何回も、この写真も含めて手元にある数十枚になるチビハチドリの仲間の写真とガイド・ブックのイラストを比較しましたが、 Little Woodstar( バラノドチビハチドリ ) の雌だと断定しました。その理由は、イラストと掲載した写真がハチドリにしては久し振りにピッタと一致したからです。ただ、個人的には未だ幾つかもっと知りたい点も残っています。まず、別冊に書かれた詳細な説明によると、過去 19 世紀から数十年前までは西側、つまり La Costa のアンデス西山麓でよく見られたそうですが、最近この種は減少し続けていて、その目撃例も著しく減ってきており、著者はレッド・データの“ Vulnerable ”に位置付けしたいと言っているほどですが、以前にもアオミミハチドリ(第 81 回、第 82 回掲載)、ズグロヒワ(第 68 回掲載)のところでも紹介しました首都キートの郊外の街 Cotacachi にある高級フランス料理レストラン“ Mirage” の広い庭園ではよく目にしました。 ただし、嘴の下から胸にかけてピンクがかった鮮やかな赤い羽毛を持った雄ではなく、写真のように可愛いらしいけれども地味な羽色の雌ばかりで、かれこれ10年近くこのレストランに行っていますが雄を見た事はただの一度もありません。雄はネクターを入れたフィーダーには寄り付かないのか、あるいは、本来の棲息域と考えられるアンデスの裾野から海抜 1200 メートル位までの所を離れたがらず、何らかの理由で雌の方が 2200 メートル前後の高地まで飛んで来るのか、その点は分かりません。それとも、雄の成鳥の数は雌の何分の一しかいないとか。多分、雄を見ていないのは単に私の運が悪いだけなのかも知れないのですが。もしかすると、バラノドチビハチドリの雌に良く似た他の種のハチドリがいたりして、などと妄想を膨らましたりもします。何れにせよ、雌だけしか見ていないのは、ちょっと、奇異なのと、美しい雄を見たことがないのを残念に思う気持ちが綯い交ぜになった複雑な気持ちです。
同レストランの庭木に留まっていたバラノドチビハチドリ。
このバラノドチビハチドリの項にも、「目撃報告はあるが確認されていない。」と書かれている箇所があるように、ハチドリはサイズも小さく、動きが細かくかつ速く、羽毛は日光を反射して角度によっては異なった色に見えること、世代交代が早いこと、多分、亜種ではないかと思ってしまうほど、地域差と個体差が大きいように思われることなど、識別がとても難しい野鳥の一つだと考えています。レストラン“ Mirage ”の庭に吊るされている幾つものフィーダーの脇には、そこを縄張りとしているアオミミハチドリが枝に留まって、外来者(?)の接近を監視していますので、このハチドリを撮るのは比較的簡単ですが、この監視者の隙を狙ってフィーダーのネクターを吸いに来るチビハチドリの仲間を撮るのは、私の写真の技術では一仕事です。それでも、写真に撮れていれば、じっくりガイド・ブックのイラスト群と比較対照出来るのですが、フィールドで観察するだけでは、その識別は投げ出してしまいたくなる位面倒なことだと思います。それだけ、専門家やマニアにとってはハチドリの観察、研究はやりがいのある仕事なのでしょう。