首都キートの北、 3200 メートルのアンデス高原で花をつけていた野生の Opuntia 。
今回は、アンデス高地で撮ったウチワサボテンの花とハシラサボテンの花を載せます。私のサボテンに関する科学的知識ときたらある意味全く無いに等しいのですが、前々回、ガラパゴスゾウガメを取上げたところから、必然的にここまで来てしまい、せめて学名だけでも見つけようとして辞書、図鑑を開いて見たのですが、園芸品種を含めると五千種を超えるサボテンの中で、エクァドールのアンデス高地に自生しているこの二種の名前は判りませんでした。大きな図書館にでも行って、一日か二日過ごせば見つかるかもしれませんが、御免なさい。
エクァドールの La Costa (海岸地帯)に展開されているバナナ園の周りや園内には、多くの多肉植物が見られますが、サボテンが自生している所はその中でも、乾燥度の高いサバンナ地帯に作られたバナナ園に限られ、そこでは主に高さが3メートルほどもあるようなハシラサボテンが見られます。サボテンが生えているような地域は、大量の水を必要とする食用バナナの栽培には基本的には向いていませんので、バナナ園はあちらにポツリ、こちらにポツリといった具合で作られています。農園廻りの際は、でこぼこ道を車で乾燥しきったサバンナ地帯を大きなハシラサボテンの間を縫うようにして目的地に行き着きます。走り回るジープで土埃が舞い上がる荒涼とした景色の中に屹立している、背の高いハシラサボテンに赤や黄色の小さな花がそこここに付いているのを目にすると、「こんなに、ごつい茎や葉になんと可憐な花が咲くのだろう。」と考えて、サボテンの花がいとおしくなります。
赤道記念碑公園の脇にあるエクァドール料理レストランの塀に沿って植えられていたハシラサボテンの花。
写真1の Opuntia はアンデス高地で海抜 3000 メートルから 4000 メートル程の道端などに自生しています。私が初めてこのサボテンを見たのは、今から41年前、日本からある大学の探検部が、当時日本で発売されたばかりのワゴン・タイプの車をメーカーから借り受けて、ブラジル、アルゼンチン、チリー、ペルーを回って、エクァドールまでやって来たとき、その学生達とアンデス越えをした時でした。ちょうど、カーニヴァルのためバナナの船積みと船積みの間隔が開いたので、私達バナナ屋も探検部の皆さんと同道すべく、取引先輸出業者の好意に甘えて、ドイツ製のワゴン車を出して貰い、雨季のアンデス越えに挑戦しました。 2000 メートルの高さを越えると、深い霧の中を先行する空冷式のドイツ車は急坂を登り続けて行くのですが、水冷式のエンジンを積んだ日本車は、気圧が低くなるに連れてラジエターの水が沸騰してしまい、 1 、 2 キロ進んでは止まり、道路脇の小川から冷たい水を汲んでラジエターに注がねばなりませんでした。そんな苦労をしながら 4000 メートルの峠を越えて Zumbahua( スンバウア ) の村を一望できる山道で小休止をするため車を止め、曇り空のアンデス高原の paramo と呼ばれる草原とそこに大きな亀裂が走ったような峡谷を眺め、その規模の広大さに圧倒された我々が足元に目を落とすと、土手の上には何処までも、赤や黄色の花を付けたこの小さな Opuntia サボテンがまるで、生垣のように続いていました。その当時は、未だサボテンの鉢植えは私が育った鎌倉でもあまり一般的ではなかったので、「花好きなあのおじさん、あのおばさんが、ここにいたら、このサボテンの株を持って帰りたがるだろうなあ。」などと、望郷の念と、初めて目にしたアンデス高原の雄大さに魅せられながら考えていました。