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No.105 Prickly Pear Cactus

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、番外編"Prickly Pear Cactus (ガラパゴスウチワサボテン:Opuntia echios var. echios)"です。

Prickly Pear Cactus (ガラパゴスウチワサボテン:Opuntia echios var. echios)

ウチワサボテンの美しい花。ゾウガメとリクイグアナの大好物です。

前回はガラパゴス・ゾウガメを取り上げたので、今回はこのゾウガメが、入植者が同諸島に新しい植物を持ち込むまでよく食べていた植物の一つ、ウチワサボテンを掲載します。そして、次回はこの太平洋の孤島とは環境がまったく異なるアンデス高地に咲く二種類のサボテンの花をテーマにする予定です。

ガラパゴスの島々の中には、海抜が 700 メートルから 1600 メートル強の高さの山を抱えた島と低い丘しかない島とがあります。高い山には海洋の湿気を含んだ風が当たり、霧や雨を生じ、頂上近くには雲霧林を形成しているサンタ・クルス島のような島もある一方、雨季を除いては殆ど降水量のない砂漠の岩場がどこまでも続くような島もあって、当然その島々の植相も異なります。柔らかい草が豊富に生えている地帯では、ゾウガメもサボテンを含めて色々な植物を食べますが、乾燥していてほとんどサボテンしかないような島では、サボテンが生命を支えてくれる食べ物になります。またこのウチワサボテンはゾウガメだけではなくリクイグアナの命の糧ともなります。ゾウガメが棲息していない島ではこのウチワサボテンの背丈は低く、棲息している島々ではその茎がまるで木の幹のように高く、時には10メートルを超えるほどにまで高く、そして硬くなります。樹状サボテンは、ゾウガメやリクイグアナに茎や葉を食べられるのを防ぐために、そのような形体に進化したと説明されています。私もそうでしたが、ガイドさんから初めてそのような説明を受けると、ほとんどの人は「ちょっと信じられないなあ。」といった反応を見せますが、その後、ノース・セイモア島などに行って、そこでリクイグアナとゾウガメがいないと、同じウチワサボテンでもこんなに背が低いのかと現物を見て、やっと、納得します。

Prickly Pear Cactus (ガラパゴスウチワサボテン:Opuntia echios var. echios)

Plaza del Sur 島の高い所から、島の北と水路を見たところ。ウチワサボテンです。

ただ、ダーウィン研究所のあるサンタ・クルス島のウチワサボテンのように、非常に高いサボテンの場合は、葉も高い所にあるし、茎も木の幹のように、つるつるで硬くなっていますので、問題はないのですが、プラサ島のように、ゾウガメはいないが、リクイグアナが数多く棲息している所は、棘だらけの葉がちょうど人間の胸の位置にありますので、ちょっと油断すると手に棘を刺してしまいます。これに刺されると、棘を抜いた後でも、多分毒があるのでしょう、日本に帰国してからも患部が一、二週間は疼きます。ガラパゴスに行かれる時は、くれぐれもウチワサボテンの棘には気をつけて下さい。特に、写真を撮るのに夢中になっていると、あの鋭い棘にやられます。また、この大きく鋭い棘はサボテン自身を守るだけでなく、ダーウィン・フィンチをはじめとする野鳥たちのより安全な巣作りを手助けします。