色鮮やかで、大きなオス。 Plaza del Sur 島で。
ガラパゴス諸島の住民に Zayapa (サヤパ)と呼ばれるこのイワガニは、ガラパゴスの磯で写真を撮ると、その対象が野鳥であれ、アシカであれ、イグアナであれ、必ず画面の何処かに写っているほどたくさんいます。大きいのは、甲羅の差し渡しが 16 センチほどあって、食べたらさぞ身が詰まっているだろうなあと思わせるような体形をしています。今まで何回も書いて来ましたように、ガラパゴス諸島では許可されて栽培、飼育されている動植物以外、その捕獲は禁止されていますから、それを食べることなどは論外です。しかし、食べたら美味しいだろうなと思うことまでは禁止されていませんので、海老蟹好きの日本人は、皆さん私と似たような思いを持つようです。数十年前、まだこの蟹の保護が徹底されるまでは、これを獲って、スープに入れて食べていた現地の人達がいたようです。日本でもイワガニを味噌汁に入れて食べる習慣は今でも方々にありますし、よくだしが出て美味しいと言われています。
日本のイワガニもそうですが、と言っても、このベニイワガニほど大きいのはもう私の住む三浦半島ではまず目にしませんが、捕まえ易そうに見えても実際はとてもすばしっこくって簡単には捕まえられないように、ガラパゴスベニイワガニも動きは素早く、時には前へ歩き、危険が迫ると、岩から岩へと跳ぶこともあります。そんな足捌きの軽快さから、英語名の Lightfoot Crab という名が付いたと聞いています。また、 Sally と言うのは、当時の有名な女性ダンサーの名前だと説明を受けました。
オス、メス、子蟹が群れていた、プラサ島の磯。
また、食べることへ戻って恐縮ですが、なにせ食いしん坊なのでご容赦ください。エクァドールでは、勿論、大陸でですが、人々は蟹を良く食べます。 Cangrejo( カングレッホ ) と呼ぶ、濃い紫色をしたマングローブ蟹、 Jaiba( ハイバ ) と言う日本のガザミあるいはワタリ蟹にそっくりなもの、 Pangora (パンゴーラ)と呼ばれるアメリカの Stone Crab に良く似た海の蟹などです。海老( Banamei 種)の養殖がブームになる25年ほど前までは、 La Costa の沿岸と汽水域は広大なマングローブの林が何百キロも続いていたので、 Cangrejo (マングローブ蟹)は大量に、そして安く売られていました。グァヤキールの人々は、町々に漁師が売りに来る、紐で束ねられた蟹を何十匹も纏め買いをして、大きな釜で茹で、夕方から親しい人達とテーブルの上に山盛りに置かれた蟹を食べながら、談笑して何時間も過ごす、「 Cangrejada( カングレハーダ ) 」と呼ばれる、芋煮会ならぬ蟹煮会をして楽しむのが、普通の家庭でも行われていました。今では、蟹も高くなり、同時に少なくなったので、洒落た蟹専門レストランへ行ってカングレハーダをするのが普通になった、と友人が教えてくれました。ちょっと、寂しいですね。
グァヤキールには数多くの中華料理店があります。その殆どは、香港を中心とした南からの移民が経営していますので、広東風の味付けで、かつては、食材としてハイバ(ガザミ)を使っていましたが、いまでは、より容易に手に入り、出汁の出の良いマングローブ蟹を使っています。日本からの我々の仲間もこの蟹を使った料理は美味しいと言っています。