La Isla del Sur 島南の崖の上で、数羽で羽を休めていたガラパゴスマスクカツオドリ。
このカツオドリが、ガラパゴスの人の近付けない険しい岩礁で羽を休めている時の姿は、なにかもっそりとしていて、同じカツオドリでも、アオアシカツオドリ(第87回掲載)と比べるともう一つ精悍さとスマートさに欠けるように私には映るのですが、ひとたび岩を蹴って、海と空の空間にふわっと舞い上がり飛翔を開始すると、その印象は一変してしまい、まさに、これぞ太平洋の大海原で魚の群れを追い求めて飛び続ける海鳥(うみどり)そのものと化します。岸から遠く離れることなく、餌を探し続けるアオアシカツオドリと違って、遥か沖合を飛び交ってナムラを探し続けるのが、マスクカツオドリで、二種のカツオドリはこうして、棲み分けているのだと説明されています。したがって、飛翔力とその速度に関しては、アオアシカツオドリはマスクカツドリに遠く及びません。
ただ、このマスクカツオドリも遠くでその飛翔姿を目にすると、一瞬ガラパゴスアホウドリと勘違いしそうになるのが、私にとってはなんとも悩ましいところです。また、この Masked Booby に良く似ていて、近年別種とされ、エクァドールの大陸沿岸部で見られるカツオドリに Nazca Booby がいますが、この鳥はガラパゴス諸島には棲息していませんので、バーダーを混乱させることはありません。
休み終わって、大海原へ飛び立って行ったガラパゴスマスクカツオドリ。
アオアシカツオドリとマスクカツオドリの生態上の大きな違いのもう一つは、前者が孤島のブッシュの中にある空き地というような平坦なスペースに、他の番と一緒に、ときには数十という番と群れを成して営巣するのに対して、後者は海原に面した険しい断崖の縁に幾つかの番が巣を構えることです。テレビの自然番組で放映される、北の海鳥が断崖に張り付くようにして、何十羽、何百、あるいは千の単位で営巣するといった光景は、ガラパゴス諸島のマスクカツオドリの場合は目にした事がありません。