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No.100 Roadside Hawk & chicks of Tropical kingbird

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Roadside Hawk (オオハシノスリ:Buteo magnirostris ) と Chicks of Tropical kingbird (オリーブタイランチョウの雛:Tyrannus Melancholicus)"です。

Roadside Hawk (オオハシノスリ:Buteo magnirostris )

Mana 地区のオリート農園の中で一際高い喬木の上から、私に警戒の鳴き声を発し続けていたオオハシノスリ。

この 100 回目の写真は、今年の6月、エクァドール出張でオリートの生産状況を視察するため Mana 地区へ入った時、オリート農園で私に対して警戒の鳴き声をひっきりなしに揚げていた鷹と、8年前にエクァドールで最大のバナナ園 Clementina 農場で、収穫されたバナナの全房の間で見つかった巣の中で心細そうにしていた雛達です。

この鷹をオオハシノスリと決めるのにも時間が掛かりました。それは、この写真を撮ったのが午後5時に近く、赤道直下ではほぼ毎日夕方の6時には日が落ちるので、夕陽に映える鷹は実際よりも赤っぽく写り、また私が今まで、他の場所で撮っていたオオハシノスリ(第41回に掲載)と比較すると、ずうっと細身で縞模様ももっと尾の方まであったからです。この写真の鷹に良く似た幾つかのイラストと比較した上で、最後には、ガイド・ブックに説明されている棲息地を参考にして、やはりオオハシノスリだろうと自分で結論を出しました。第41回に掲載した鷹はハイウェイの所まで出ていましたが、この鷹を取ったのは、 Mana 地区の砂利道の幹線道路からでも、数キロメートルは奥に入った、オリートの有機栽培農園の中だったことも、ひらけた場所を好むオオハシノスリとは違うのではないかと迷った理由です。


Chicks of Tropical kingbird (オリーブタイランチョウの雛:Tyrannus Melancholicus)

Clementina ( クレメンティーナ農園 ) の Packing house (集果包装場)で作業中に見つかったオリーブタイランチョウ(?)の雛。

バナナの全房の間に作られた巣の中で見つかった雛たちは、オリーブタイランチョウの雛ではないかと思います。最大の理由は、通常のバナナ栽培をしている、つまり有機栽培や減農薬(特別)栽培をしているのではない、 Clementina 農園でも多くのオリーブタイランチョウがあちこちの電柱や電線、バナナの葉の天辺で縄張りを見張っているのが見られることなどからです。ただ、「間違いなくそうかい。」と聞かれたら、「そうです。」と答える自信はありません。ちなみにこの写真は、巨大エル・ニーニョがエクァドールを襲った 1997 年の 9 月に、世界食材の旅の取材で朝日新聞の記者とカメラマンの方がエクァドールに来たとき撮ったものです。バナナの全房(英語では“ Stem ”あるいは“ Bunch” と呼ばれます)の間に作られた巣に気が付かず、パッキング・ハウスまで運んで来て、作業員が一房、一房、全房から外して行く段階で雛がいるのに気が付く事はちょいちょいあります。去る7月に「所さんの目がテン( 7 月 24 日放映)」の撮影スタッフが同農園を訪れたときも、同じように巣と雛が見つかって、そのカットが放映されました。多くの場合、この雛達はそのバナナが収穫されたと思われる近くの全房の中に戻されます。バナナの幹、正確には偽茎( Pseudo stem )のスペースに巣を作る野鳥では、カマドドリが知られていますが、この鳥はどうもバナナの花が開花してから、実が成り、収穫されるまでの時間(約3ヶ月)を分かっているようで、バナナの全房が収穫される時には若鳥の巣立ちを終えているらしく、収穫の時にカマドドリの雛を見たという話を聞いたことはありません。

いずれにせよ農園の中や周囲に鷹類がいたり、バナナの全房の中に野鳥が巣を作ったりしているという事は、そこの生態系が健全である、という証だと思います。