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No.10 Red-billed Tropic Bird(アカハシネッタイチョウ)

Photo & Text:Motoaki Itoh

Red-billed Tropic Bird(アカハシネッタイチョウ)

Red-billed Tropic Bird(アカハシネッタイチョウ)

巣へ戻るために、尾羽を広げて減速中。

今回と次回は、Islas Galapagos(ガラパゴス諸島)の野鳥を取り上げます。この島がエクアドル領であることはご存知だと思います。

ガラパゴス諸島は、チャールス・ダーウインの進化論発表以来、その特異な生態系によって世界的に有名な場所になりましたが、エクアドル・バナナ、特に、有機栽培バナナやサニート・バナナにとっても、特別な意味を持っています。

サンタ・クルス島にあるダーウイン研究所は、エクアドル政府と国際科学財団によって維持運営されています。そこでは、多数のエクアドル研究者たちが世界各国から来た学者たちと働いて来ましたし、今も研究活動を行っています。ここでの長年にわたる研究と経験は、当然マスコミにも頻繁に取り上げられ、この国の多くの人々の意識に、生態系を守ることの大切さを根づかせたことは事実です。この考えを実践に移して農業をしているのが、有機バナナやサニート・バナナを栽培している人たちです。


Red-billed Tropic Bird(アカハシネッタイチョウ)

North Seymour島上空を飛んでいるところ。

南国の、濃く青い空の中を滑空する、真っ白な流線型の姿を持ったネッタイチョウは、ギリシャ・ローマ時代、いや、もっと前から、海の民に愛され続けていました。

神話は語ります。ある日、太陽神アポロの子ファエトン(phaethon)は父神の「日の馬車」を持ち出し、天空を駆け上がって行きました。ところが、神馬の制御ができなくなり、太陽に近ずき過ぎ、馬車が熱に溶けて、海の上に落ちてしまいました。そして、その波間から、一羽の純白な鳥が鳴きながら大空に舞い上がると、空のかなたへ飛んで行ってしまった、と。

この鳥の学名“Phaethon Aethereus”は、このギリシャ神話に由来するものです。

中空は未だ深い青を残し、西がだいだい色に輝き始めたガラパゴスの空を、North Seymour島から、夕日に向かってDaphne島へと、白く長い尾羽をまっすぐに伸ばし、“キッー、キッー、キー”と鳴きながら帰ってゆくネッタイチョウ達を見ていると、まるで夢の世界にいるような錯覚に囚われてしまいます。