Frushi Groupの“Konita”農園でバナナの葉の上で仲睦まじく羽を休めていたDull-colored Grassquit(マメワリ)。スズメみたいだと思いませんか。
バナナ園内およびその周辺では、種子をつける草木が多いので、Finch、Seedeater、Grossbeakなどカエデチョウの仲間を多く見ることが出来ると今までにも書いて来ました。ここでは食虫のタイランチョウとその種類の多さを競う鳥達です。今回のマメワリはその地味な姿と、スズメ目カエデチョウ科の鳥ということで、バナナ園には幾らでもいそうな感じの鳥ですが、意外にその姿を見ることはカワリヒメウソ等と比べると少ないのです。この鳥はLa Costa(海岸地帯)の中心地、Quevedo(ケヴェド)地区でも、東部ではよく目にしますが、他の地区ではあまり見たことはありません。しかしガイド・ブック“The Birds of Ecuador”によれば、私がバナナ農園視察をする地域と、La Costa(海岸地帯)の西に展開する広大な乾燥地帯では、普通に見られる野鳥だと説明されています。では、何で私があまり目にしないのか、不思議に思って巻末にある詳細説明を読んでみて、納得がいきました。この野鳥は、草地よりも林の端の潅木(Shrub)の中を好むそうで、どうりで背の高い牧草が生えているようなバナナ園の周囲では見掛けなかったわけです。ただ、多分もう一つの理由は、この鳥の姿形も羽毛の色も日本でよく見る野鳥達と変わらないので、派手な鳥や珍しい野鳥が多いエクァドールでは、私の注意を引かなかったということもあると思います。
現に左に掲載した写真をFrushi Groupの農園“Konita”で撮ったとき、最初に私の口から出た独り言は、「あれっ、ニュウナイスズメかぁ。」というものでした。そのくらい、私には違和感のない野鳥で、はっとするような驚きというか、構えるような気は全く起きなかったことを今でもはっきり想い出します。ニュウナイスズメがバナナ園にいる訳はないよなあ、と考え直してレンズを向けたような次第です。右に載せた写真は、Sr. Freddy Hoyos(フレディ・オージョスさん)のサニート・バナナ農園を日本からの同業の仲間たちと訪れたときに、同行していた息子が水洗い、撰果、箱詰め等の行程と注意点を皆に説明、通訳をしてくれていたので、手持ち無沙汰になったし、仲間達はその時を待っていたんだろうと邪推しますが、どの鳥からシャッターを押そうかなあ、と私は農園に眼を向けました。すると、以前Konita農園で見たマメワリがいましたので、まずはこの鳥から撮り始め、次に、オレンジの枝の中で可愛いというか、粗末というか、「これで良いの。」と言うしかないような簡単な巣に座っていたRufous-tailed Hummingbird(ハイバラエメラルドハチドリ)を撮影しました。
Sr. Hoyosの三つのサニート・バナナ農園のひとつ“Maravillas Bananas”で撰果場脇の花壇で撮ったDull-colored Grassquit。
巣にいる野鳥にストレスを与えるのは嫌なので、次の目標を探していると、バナナの葉の向こうからTurkey Vulture(ヒメコンドル)が悠然と旋回しながら姿を現しました。私にとっては予想通りの展開で、中南米でバード・ウオッチングを良くされている方はご存知だと思いますが、この鳥は縄張り意識が強いというよりも、好奇心が異常に強いのではないかと想像していますが、普段見慣れない人間が複数で来ると必ず様子を見にやって来ます。このSr. Hoyosの農園、Mocache市の女性市長さんSra. Andradeの農園、Frushi GroupのSan Fermin農園、何処でもヒメコンドルが棲んでいる所では、農園に到着して数分のうちに上空に姿を現すのです。飛んでいる姿は、Gallinazo(ガジナーソ)と半ば蔑みの響きを込めて呼ばれる和名「クロコンドル」に似ているのですが、ヒメコンドルはたとえ上昇気流に乗っていない時でも、ガジナーソのようには忙しなく羽ばたきをしないので直ぐに分かります。勿論、望遠レンズを通して見れば頭部の赤い色がはっきりと目に映りますので、誰にでも見分けられます。それでも、三番目にレンズを向けたのは、胸から腹にかけて鮮やかな黄色い羽毛をしたSocial Flycatcher(アカボウシヒタキモドキ)でした。次々と、野鳥の名前を羅列して何の意味があるかと質問されそうですが、ほとんどのサニート・バナナ農園や化学物質使用を抑えた農園ではそのくらい、さまざまな野鳥が目撃できるとも言いたいのです。
エクァドールのバナナ農園視察に来る大勢の仲間達は、皆さん青果業界のヴェテランですが、一様に私共のバナナ園の中にこれほど多様な、野鳥や昆虫、小魚がいることに驚きます。日本の田んぼや果樹園、アジア、ヨーロッパ、北米の近代的大規模農業の現場を見て来た人達がほとんど同じような印象を持たれるようで、有難いことです。例えば、去る6月7日付けのフィリピンのMindanewsのインターネット版に、フィリピン第二の高峰Kitanglad山山腹でシンガポールのバーダーと鳥見をした記事が載っていました。3日間で43種の野鳥、一日平均14種の野鳥しか見ることが出来なかったそうです。因みに、Kitanglad山周辺では約200種の野鳥が確認されていたそうです。自然の後退は大規模プランテーションの高地での展開と違法伐採が主な原因らしく、自然を大切にしているミンダナオ島古来の部族の人達はその事を憂慮しているようです。この記事を読んで、ふっと、もし私がバーダーの方々をLa Costaの、つまり平地の4つの農園、Sr. Hoyosの農園“Laurita”、Sra. Andradeの農園“San Marcos”、 Frushi Groupの農園“Konita”と“San Fermin”に朝の7時から夕の18時まで、11時間案内したらどの位の野鳥を見せられるのかと思って、ノートに付けながら数えてみました。1時間程掛かりましたが、過去私が撮影した野鳥だけでも、70種を超えました。ただし、運が悪ければ、一日で見れる数は55種くらいにしか至らないかも知れませんが。勿論、San Marcos農園とSan Fermin農園の間の移動は小型機で行うとしてです。写真を撮らないで、双眼鏡だけでの確認でしたら、もっと多くの野鳥種が見られるでしょう。そして、これはあくまでバナナ農園の内部とその周辺ですから、オリートの産地の“Mana”地区や、Mindoに近い地域のオリート農園を訪れたら、こんなものではありません。Tandayapa Bird Lodgeのパンフレットに拠れば、Tandayapaも内包するMindo-Nambillo地区には600種を超える野鳥が確認されているそうですから。